FOMC議事録、金融政策の道筋が不透明であることが浮き彫りに

経済

2023/5/25 9:05

<チェックポイント>

●今後どの程度の金融引き締めが適切か不確実

●金融システム不安によるインフレ抑制効果が不透明と

●6月会合でも「利上げサイクル停止」か「利上げ継続」か議論

 FRB(米連邦準備制度理事会)が24日に公表した2-3日開催分のFOMC(公開市場委員会)議事録で、今後の金融政策の道筋が不透明であることが浮き彫りになった。

 議事録では、米金融システム不安を含めてさまざまな条件を考慮した今後の金融政策についての議論で、インフレ率を物価目標の2%上昇に戻すために追加の利上げが必要と主張する委員と、経済が現在の予測通りに進めば追加の利上げは不要と指摘する委員がおり、「全体として、どの程度の政策引き締めが適切になるのかについては不確実性があるとした」とした。

 FRBは、銀行危機のインフレ抑制効果や、これまでの利上げの影響が景気とインフレに及ぶまでのタイムラグ(時間差)を考慮すると、利上げサイクルが終了したとの感触を強めているものの、利上げはもう十分なのか、または、今後も数カ月利上げが必要なのか自信を持てず、選択肢を残さざるを得ない状況となっているようだ。

 3月のシリコンバレー銀行の経営破たんを発端とする金融システム不安については、ほとんどの委員が銀行セクターの動向がさらなる信用状況の引き締めにつながり、経済活動の重しとなる可能性があると判断している。金融機関による融資基準の厳格化、インフレ抑制の可能性も指摘しているが、政府の対応などを背景に、「信用へのアクセス(借り入れ意欲)は大幅に低下していない」とし、銀行危機のインフレ抑制効果は不透明と見ていることも分かった。

 議事録では、「銀行システムは健全で回復力があり、FRBと政府機関が連携して講じた措置が銀行セクターの状況を落ち着かせるのに役立っている」としたものの、「委員はマネーマーケットファンド(短期金融資産投資信託)やヘッジファンドなど一部のノンバンク金融機関が経営破綻や不安定化の可能性がある」と指摘している。

 今回の議事録を見る限り、次回6月会合でも利上げを一時停止してこれまでの利上げ効果を見極めるのか、それとも利上げを継続するのかの2つの選択肢について議論が続く可能性を示しており、金融政策の不確実性が増したといえる。

 実際、FRBは5月のFOMC後に発表した声明文で、「適切な金融政策スタンスを検討する際、経済見通しに対する影響を引き続き監視し、FRBの使命(物価の安定と雇用の最大化)の達成を妨げる可能性のあるリスクが発生した場合、金融政策スタンスを適切に調整する用意がある」との文言を残している。

 その上で、FRBは「雇用市場の状況やインフレ圧力、インフレ期待、金融と国際情勢など幅広い情報を考慮する」とした。また、パウエル議長は会合後の会見で、「利上げサイクルの一時停止決定は、会合ごとに収集される経済データに基づいて行われる」と、釘をさしている。

 今回の議事録でも「委員は概して、入ってくる情報とそれが経済見通しに与える影響を注意深く監視することの重要性を指摘した」とした。

提供:ウエルスアドバイザー社

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