【為替本日の注目点】ドル円は介入警戒感から141円手前より急落

為替

サーチナ

2023/5/31 10:31

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

 東京時間に141円目前まで買われたドル円は、午後3時半頃急落。財務省など金融当局が3者会合を行うとの情報に140円前半まで下げる。NYでは上値が重く、米金利が大きく低下したことで139円57銭までドル売りが進む。ユ-ロドルは1.07台前半から半ばで小動き。債務上限問題の法案採決への準備が行われたが、共和党保守強硬派から批判が続出。ダウは50ドル下げ、ナスダックはテスラ株などの上昇もありプラスで引ける。債券は急騰。長期金利は大幅に低下し3.68%台に。金は反発。原油は大きく下げ70ドルを割り込む。

マーケット情報

1-3月期四半期住宅価格指数 → 0.5%

3月ケース・シラ-住宅価格指数 → -1.15%

3月FHFA住宅価格指数 → 0.6%

6月コンファレンスボード消費者信頼感指数 → 102.3

ドル/円 139.57 ~ 140.11

ユーロ/ドル 1.0715 ~ 1.0746

ユーロ/円 149.73 ~ 150.28

NYダウ -50.56 → 33,042.78ドル

GOLD +13.70 → 1,958.00ドル

WTI -3.21 → 69.46ドル

米10年国債 -0.112 → 3.687%

本日の注目イベント

豪 4月消費者物価指数

日 4月鉱工業生産

日 4月小売売上高

中 5月中国製造業PMI

中 5月中国サービス業PMI

独 5月雇用統計

独 5月消費者物価指数(速報値)

欧 ECB金融安定報告

英 4月消費者信用残高

米 5月シカゴ購買部協会景気指数

米 4月雇用動態調査(JOLTS)求人件数

米 ベージュブック(地区連銀経済報告)

米 コリンズ・ボストン連銀総裁とボウマンFRB理事、イベント開会の挨拶

米 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁講演

米 ジェファーソン・FRB理事講演

加 1-3月期GDP

 債務上限問題の基本合意が発表され、NYとLDNが休場だったにもかかわらず、ドル円は荒っぽい動きを見せ、乱高下しています。昨日の朝方は140円台で始まりましたが、140円台は維持し、その後植田日銀総裁が参議院財政金融委員会で、「賃金が継続的に上昇していく中での持続的・安定的な2%の物価上昇の達成にはまだ時間があると考えているので、粘り強く金融緩和をというスタンスだ」と述べたことが材料となり円が売られました。この発言を好感した株式市場でもマイナス圏で推移していた日経平均株価が、一時120円を超える上昇を見せたこともあり、ドル円は午後3時過ぎには140円92銭前後まで買われています。

 ただその後ドル円は急落しています。財務省、金融庁、日銀が3者会合を開くといった報道が引き金でした。会合後財務省の神田財務官は、「為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要だ。過度の変動は好ましくない」と、先週から続く足元の円安をけん制する発言を行いました。神田氏はその上で、「為替市場の動向をしっかり注視し、必要があれば適切に対応していく考えに変わりはない」と語っていました。日銀総裁による金融緩和政策継続発言で円安が進み、あわてて「過度の変動には対応する」とコメントする財務省。この構図は昨年からずーと続いています。植田総裁からは、市場が想定していた以上のハト派寄りの発言が相次ぎ、これが円安と株高を加速させている面があることは、市場の一致した見方かと思われます。

 筆者は、先週末とさらに今週に入っても、債務上限問題の基本的合意が株高、債券高、金利低下に伴いドル円が売られるリスクに言及してきました。連休明けのNY市場ではナスダック指数は上昇しましたが、ダウは下落し、債券は大きく買われたことから金利が大幅に低下し、利益確定のドル売りを誘発した格好です。ある程度想定通りの動きだったと言えます。NY株が思ったほど買われなかった理由は、債務上限問題を巡る議会での法案採決に不透明感が出て来たからです。共和党強硬派議員らは、デフォルト回避を目指したホワイトハウスとマッカーシー下院議長の合意に対し、「報復」すると息まいています。テキサス州選出のロイ下院議員は、「たとえ何が起きようとも、報いを受けることになるだろう」と過激な言葉を用いて批判しています。同議員の他、共和党保守強硬派の下院議員連盟「フリーダム・コーカス」のメンバーらもマッカーシー議長を非難しています。(ブルームバーグ)今回の基本的合意は「妥協の産物」との批判はあるものの、合意に至らず、万が一米国がデフォルトに陥った場合の世界的な影響は、計り知れないものがあります。主義主張がどうであれ、現時点での選択肢は「合意」以外にはありません。もし、この先議会が法案を否決するようなら、彼らの名前は歴史に「汚名」として残ることになるでしょう。

 リッチモンド連銀のバーキン総裁はオンラインイベントで、「需要を低下させることでインフレ率を押し下げる必要があると考える」と述べ、その上で、「どのような見方をしても、インフレ率は高すぎるようにしか見えない」と発言しています。来週から「ブラックアウト」に入るため、今週はFOMCメンバーによる発言機会が多くあり、今日も多くの発言が聞かれそうです。6月会合では0.25ポイントの利上げ確率が高まっていますが、今週末の雇用統計と会合期間中に発表される5月のCPIの結果次第ではどうなるか分かりません。多くのメンバーが「タカ派寄り」の発言を行うとみられますが、メンバーの中でも意見が分かれているのも事実です。注目したいと思います。

 本日のドル円は139円~140円80銭程度を予想します。

(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)

・今日のアナリストレポート

https://info.kabushiki.jp/rd/gaitameonline_academy01.htm

・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧

https://info.kabushiki.jp/rd/gaitameonline_calender.htm

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