<新興国eye>タイ中銀、全員一致で0.25ポイント再引き上げ―小幅利上げ継続を示唆

新興国

2022/9/29 9:10

 タイ中央銀行は28日の金融政策委員会で、政策金利である翌日物レポ金利を0.25ポイント引き上げ、1.00%とすることを全員一致で決めた。利上げ幅は市場の大方予想通りだった。一部では0.50ポイントの大幅利上げを予想していた。

 中銀は20年2月会合で政策金利を0.25ポイント引き下げたあと、コロナ禍の悪影響により、タイ経済のリセッション(景気失速)懸念が強まったとして、3月20日の緊急会合で0.25ポイント引き下げた。その後、5月に3回目となる利下げを実施。この結果、2月以降の利下げ幅が計0.50ポイントに達したことから、20年6月以降、6月会合まで16会合連続で据え置いた。しかし、通貨バーツ安とインフレ上振れリスクが強まったため、前回8月会合で18年12月以来、3年8カ月ぶりに利上げ(0.25ポイント)に転換。これで利上げは2会合連続となり、利上げ幅は計0.50ポイントとなった。

 中銀は会合後に発表した声明文で、再利上げを決めた理由について、前回会合時と同様、インフレ加速懸念を挙げた。中銀は、「タイ経済は主に観光と個人消費に牽引され、回復の勢いを増し続けている。コモディティ(国際相場商品)相場の下落にもかかわらず、コスト高を受けた価格転嫁が増えているため、依然としてインフレが高止まりしている」と指摘。その上で、「段階的な金融政策の正常化が依然として金融政策にとって適切な道筋であるとみなしており、利上げを決めた」としている。

 市場では高インフレに加え、米国の大幅利上げ継続によるドル高の進行で、タイからの資金流出懸念でバーツが急落。16年ぶりの安値となったこともバーツ安の進行阻止の再利上げの背景となっていると見ている。

 景気の見通しについて、中銀は、「タイ経済は、主に観光と個人消費に牽引され、22年は3.3%増、23年は3.8%増の成長が予想される。外国人観光客が増加し続けているため、観光部門は予想よりも早く回復している」としている。22年の成長率見通しは従来予想通り据え置かれたが、23年は従来予想の4.2%増から下方修正された。

 インフレ見通しについては、中銀は、現時点では、「全般的に賃金上昇の兆しは見られない。また、タイ経済はまだ回復段階にあるため、需要側のインフレ圧力は限定的だ」としたが、インフレの先行きについては、「タイ経済は回復を続け、インフレリスクが高まると判断する」と慎重な見方。その上で、「世界的な原油価格の下落とサプライチェーンのボトルネック(制約による品不足)の段階的な緩和により、インフレ率(全体指数)は22年に6.3%上昇となるが、23年には(物価目標内の)2.6%上昇に低下。コアインフレ率はコスト上昇の価格転嫁が進み、22年に2.6%上昇、23年は2.4%上昇と、従来予想より高目になる」と予想している。

 また、今後の金融政策について、中銀は、前回会合時と同様、「政策金利は長期的に持続可能な成長と一致する水準まで徐々にゆっくりと(“measured”)正常化されるべき」とした上で、「今後の成長とインフレの見通しが現在の予測からかけ離れれば、金融政策の正常化(利上げ)のタイミングと規模を調整する用意がある」とし、引き続き小幅利上げを継続したい考えを示している。市場では米利上げ継続により、タイからの資本流出を防ぎ、また、バーツの暴落を回避するため、中銀は今後、小幅利上げが必要になると予想している。

 次回会合は11月30日に開催される予定。

<関連銘柄>

 タイSET<1559.T>、アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、

 上場MSエマ<1681.T>、アセアン50<2043.T>

提供:モーニングスター社

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ