【為替本日の注目点】ドル円再び145円台に乗せるも続かず

為替

サーチナ

2022/10/4 10:38

 ドル円は昨日の東京市場午後1時過ぎに145円台を回復し、145円28銭近辺まで一気に上昇したが、NYでは反落。米金利の低下を手掛かりに144円16銭まで売られる。ユーロドルは小幅に続伸。0.9844まで買われたが、引き続き上値の重い展開が続く。株式市場は大幅に反発。製造業の鈍化を示す指標に、ダウは700ドルを超える上昇。S&P500も92ポイント買われ、3指数は揃って大幅高に。債券は大幅に反発。経済指標が予想を大きく下回ったことで、FBBが過度の利上げを回避するとの見方から価格が上昇し、長期金利は3.7%台を大きく下回る。金と原油は大幅に買われる。

マーケット情報

9月ISM製造業景況指数 → 0.9

9月自動車販売台数 → 1349万台

ドル/円 144.16 ~ 144.97

ユーロ/ドル 0.9758 ~ 0.9844

ユーロ/円 141.36 ~ 142.22

NYダウ +705.38 → 29,490.89ドル

GOLD +30.00 → 1,702.00ドル

WTI +4.14 → 83.63ドル

米10年国債 -0.190 → 3.639%

本日の注目イベント

日 9月東京都区部消費者物価指数

豪 豪8月住宅建設許可件数

豪 RBA、キャッシュターゲット

欧 ユーロ圏8月生産者物価指数

米 8月製造業受注

米 カプラン・ダラス連銀総裁、イベントで挨拶

米 ウィリアムズ・NY連銀総裁、イベントで挨拶

米 メスター・クリーブランド連銀総裁、イベントで挨拶

米 ブラード・セントルイス連銀総裁、会議で挨拶

米 ジェファーソン・FRB理事講演

米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁講演

 「9月のISM製造業景況指数」、これが全ての市場に好影響を与えました。

 同指数がコロナ禍初期以来の低水準となったことで、米金融当局が過度の引き締めに向うとの懸念が弱まり、10年債が買われ長期金利が急低下。ドル円はこの動きにドル売りが強まり、一時144円16銭まで売られています。株式市場ではこれを好感してダウが700ドルを超える上昇を見せ、S&P500、ナスダックも大幅高で取引を終えています。先週は特に株価の下落がきつく、その反動もあったようです。WTI原油価格は「OPECプラス」による減産の可能性を背景に大幅高となり、金もドルが売られたことで30ドル高でした。結局「悪材料は、好材料」となった典型的な動きだったと言えますが、「ISM製造業景況指数」はそこそこ重要経済指標ではありますが、最重要指標である今週末の雇用統計が予想を大きく下回った場合には、どのような影響があるのか、今から身構えておく必要があるかもしれません。3月の会合から全ての会合で利上げを行い、景気抑制を狙った政策の効果がようやく目に見えてきたのかもしれませんが、米景気は予想されているよりも腰が強く、「米国の経済指標が驚くほど堅調であり、これまでのところ、金融環境の引き締まりの影響はほとんど表れていない」(バークレーズ証券)とのコメントもあります。今回の指標だけでは、インフレの動向を判断する材料としてはまだ十分ではありません。

 米国では、特に労働市場が人手不足を背景に好調な雇用環境が続いている可能性もあります。9月の雇用統計が予想の25万人か、それ以上であったらまたドルが買われる可能性もありそうです。ドル円は昨日の東京時間午後、144円80銭前後から一気に145円28銭辺りまで買われ、9月22日の政府日銀による市場介入時以来となる145円台を回復する場面もありました。ただ、その後も何度か145円台に乗せましたが勢いはなく、NYでは長期金利の低下を手掛かりに144円16銭まで押し戻される局面もありました。145円台ではまだ介入警戒感があるようです。いずれにせよ、今後のデータ次第でどちらにも振れる可能性があるということです。

 NY連銀のウィリアムズ総裁は講演で、「金融引き締めによる需要は落ち着き始めており、インフレ圧力も後退し始めているが、われわれの仕事はまだ終わっていない」と述べ、今後もインフレ抑制に注力するとしながらも、「借入、住宅ローン金利や株価といった金融状況の幅広い目安は、支出を後押しする威力が大幅に減じている」とし、「その結果、住宅市場が落ち込み、個人消費や企業投資の鈍化の兆候が見られる。こうした状況が続けば今年の実質GDPの伸びはほぼ横ばいとなり、2023年も緩やかな伸びにとどまると予想する」と語っています。現時点ではこのようなややハト派的な見方は少数かと思われますが、さらにヤニデル・リサーチのエド・ヤニデル社長は「ドルの上昇継続が示唆するように金融市場には既に不安定の兆しが見られる。米金融当局は11月にあと1回利上げした後は、引き締めサイクルの終了を検討すべきだ」との見方を示し、「大幅利上げやドル急伸、量的引き締めに伴う金融市場のストレスは、政策当局が金融安定を最優先にすべき状況にまで高まっている」と指摘しています。(ブルームバーグ)

 トラス英政権は3日、所得税最高税率を45%から40%に引き下げる案を撤回することを明らかにしました。トラス首相は、経済対策の一環として大幅減税を行うことを表明しましたが、その財源として国債の発行が見込まれることから、債券、株、英ポンドが大きく売られる「トリプル安」の様相を呈しました。その後はイングランド銀行の介入で値を戻しましたが、昨日のこの表明でポンド・ドルはさらに上昇しています。結局1.0360近辺まで売られたポンド・ドルは1週間で「約1000ポイント」値を戻したことになります。いやはや恐ろしい通貨です。日本にとっても、国の借金である国債の発行残高を考えると、「対岸の火事」とは言えません。

本日のドル円は143円50銭~145円50銭程度を予想します。

(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)

・今日のアナリストレポート

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・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧

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