【GW特集】日本株は「セル・イン・メイ」乗り越え――注目テーマから選ぶ有力銘柄(1)量子コンピューター革命

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連休特集

2023/5/3 9:00

 マーケットを取り巻く不透明な外部環境は、日本株の先行きにも影を落とす。ただ、独自の好材料に目を向けると、米国や他の海外諸国にはない魅力が本邦相場には息づいている。ゴールデンウイーク(GW)にお届けする特集として、有力銘柄を探った。

(写真:123RF)

「夢の計算機」国産も始動、研究開発を飛躍的向上へ

 最先端の物理を駆使した「夢の計算機」、量子コンピューター。その国産初号機=写真=が理化学研究所(埼玉県和光市)でこのほど稼働を始めた。東京大学も新たに国内最高性能の米IBM製商用機を導入するなど、日本でも実用化へ動き始めた。関連銘柄から目を離せない展開が続きそうだ。

 量子コンピューターは、量子力学特有の「量子重ね合わせ」「量子もつれ」といった現象を応用し、従来のコンピューターをはるかに上回る速度での情報処理が可能になる。産学官が結集して開発した理研のマシーンの計算性能はスーパーコンピューターをしのぎ、将来的には数千万倍や数億倍、それ以上のパフォーマンスを実現するものが使用されるだろう。

(写真は理研プレスリリースから)

 旧来のコンピューターでは多くの時間を要していた複雑な計算や、膨大な量のデータ分析の結果も、一瞬のうちにはじき出せるようになる。つまり、量子コンピューターの普及は、さまざまな産業で国際競争に勝ち残るためのイノベーション(技術革新)を起こす上で欠かせない要素と言えるのだ。それをめぐり、世界で熾烈(しれつ)な開発レースが繰り広げられている。

 岸田内閣の肝いり政策「新しい資本主義」においても、量子コンピューターは重点投資項目の1つとして盛り込まれた。政府は先端技術の実用化に向けた計画の取りまとめを急ぐ。活用に関しても、経済産業省は外部からのアクセスを可能にするクラウド基盤の確立に向け、東大などに今後5年で40億円超を助成する。

周辺銘柄筆頭はFスターズ

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 2021年に日本で初めて商用機が設置された東大では今年4月、127量子ビットの新型マシーンを導入した。量子ビットとは、量子コンピューターにおける情報の最小単位で、これを127搭載しているものは国内にはほかに存在しない。今後はクラウドにより、トヨタ自動車(7203)やソニーグループ(6758)が先端領域の研究開発で同機を駆使していく。

 日本のIT巨頭3社も量子コンピューターに商機を見いだす。

 NEC(6701)は量子ビットの製造に世界で初めて成功した。商用化の先駆けであるカナダのD-Wave社とも協業している。また、スパコンで知られる富士通(6702)は理研と組み、今3月期中に産業分野にまで応用範囲を広げる方向。NTTデータ(9613)も検証や評価の領域でサービス展開を進めていく。

 一方、量子コンピューターの活用支援とシステム開発で注目される企業がフィックスターズ(=Fスターズ、3687)だ。2017年に日本で初めてD-Waveと提携し、独自のクラウド上で計算技術を提供している。また、富士通や日立製作所(6501)、東芝(6502)、NECなどとも協業しており、周辺銘柄の筆頭的な存在だ。

 HPCシステムズ(6597)は、量子コンピューターに使うアルゴリズムやアプリの開発を手掛けるQunaSys(東京都文京区)と資本・業務提携を結び、化学計算プログラムの事業展開を目指す。無機化学材料の日本化学工業(4092)は、動作のカギを握る極低温冷却機器や、量子ドット材料を手掛けている。

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