海外株式見通し=米国、香港

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2023/11/9 10:30

【米国株】年末高へ視界晴れる?

 年末高への視界が良好になってきたのかもしれない。

 FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げは、1日のFOMC(米連邦公開市場委員会)における政策金利据え置きに加え、10月ISM製造業・非製造業景況指数の低下、さらには10月雇用統計を中心とした一連の労働市場の失速データによって終了したとの見方が広まった。従来までは、すぐにまた強い経済指標が出て市場の安心感が覆されていたものの、今回はどうやら状況が異なるようだ。

 第1に、米株の重しとなっていた長期金利に関し、CFTC(米商品先物取引委員会)統計における長期国債先物の投機筋ポジションの売り越し幅は80万枚超の歴史的高水準にあり、これから大規模な買い戻しが見込まれる。また、財政赤字拡大による需給懸念は、米財務省による国債買い戻しプログラムが緩和する可能性が高い。

 第2に、10月下旬に年初来で最も弱気に傾いた機関投資家のスタンス反転が見込まれる。全米アクティブ投資マネジャーズ協会(NAAIM)の週次集計「NAAIM指数」は、年初~10月末までの平均値64.00に対し、10月25日に年初来最低の24.82まで低下していた。同指数は、NAAIM会員の株式エクスポージャーを示す。

 中東の地政学リスクはどうか。ロシアのウクライナ侵攻の際も、金融市場はぼっ発1カ月の間に大きく揺れたものの、その後は冷静さを取り戻した。歴史をさかのぼれば、第2次世界大戦時もダウ工業株30種平均は太平洋戦争開戦(1941年12月)から4カ月で底打ち反転し、終戦の45年8月ごろまで約8割ほど一貫して上昇している。

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【香港株】三一重工は復興需要と海外進出の両輪に期待

 中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の常務委員会は10月24日、1兆元(約20兆円)の新規国債発行を承認した。これにより調達する資金は、自然災害で被災した地域の復興や、都市部の排水設備改築に充てられ、国土の強じん化が進められる。

 7月には重慶市や四川省、陝西省、浙江省や北京、河北省など全国的に集中豪雨が相次いだ。延べ703万人が被災し、2300戸以上の住宅が倒壊するなど被害は大きく、被災者が冬までに自宅や新居に入れるよう家屋の修復や再建を急ぐ必要がある。

 こうした動きは、建設機械の需要を高めるとみられる。上海市場銘柄では、中国最大手でコンクリートポンプ車の世界最大手の三一重工(SANY)が注目される。大手不動産開発企業の相次ぐ経営不安で事業環境が悪化する懸念により、株価は調整局面が続いている。コマツ(6301)を上回っていた時価総額(米ドル建て)も、2022年9月に追い抜かれた。

 しかし、株価の動きとは対照的に、三一重工の23年4~6月決算は売上高が前年同期比10.9%増の217.09億元、純利益が同80.8%増の18.88億元に拡大した。海外販売先が180数カ国・地域にまたがり、特に欧米市場の伸びが高かった。

 これまでの株価動向には、同社の海外での堅調な業績が反映されていない。また、国内での経済復興需要への期待も十分に織り込まれていないと言える。7日終値での予想PERは18.85倍と割高感はない。

 インドネシアの首都移転プロジェクトでも、中国企業は他国に先駆けて施設建設を積極化している。同社のコンクリートポンプ車が使われている。

(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

(写真:123RF)

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