海外株式見通し=米国、香港

【米国株】生成AIブームで浮上する銘柄は?

 GPU(画像処理半導体)を主力製品とするエヌビディア(NVDA)の8~10月決算は、生成AI(人工知能)の威力をまざまざと投資家に見せつけた。同社はAI向け半導体で世界シェア約8割を握る。

 チャットGPTなど対話型サービスの浸透に伴いAI開発企業がこぞって購買競争を繰り広げる中で、コア技術である大規模言語モデル(LLM)に必要なパラメーター数や学習データ量の増加により、GPUの供給不足が加速する構造が当面続くだろう。

 注目したいのはその主役を支える企業だ。エヌビディアの最新の半導体「HGX H100」の認定パートナーを取得しているサーバーメーカーは世界で3社。うち、台湾企業が2社、米国企業が1社(スーパー・マイクロ・コンピューター<SMCI>)だ。

 世界の主要半導体メーカーが加盟する統計機関WSTSによる世界半導体市場統計が、11月28日に半年ぶりに更新された。2023年と24年の見通しが上方修正され、24年のメモリーの需要は前年比45%増(全体で13%増)が見込まれている。

 メモリーの中でもデータ記憶保持に使い高速処理に向いているDRAMの「広帯域メモリー(HBM)」は生成AI普及の追い風を受けて急成長する方向。HBMは韓国勢のシェアが9割と高いものの、米マイクロン・テクノロジー(MU)も1割を占める。

 生成AIが具体的な製品・サービスに付加価値を付けて供給されることで、成長重視の高過ぎた期待値から大きく株価の下落したグロース銘柄が、キャッシュフロー改善とともに見直されつつある。

 軍事作戦立案までAIで行う「ゴッサム」を擁するパランティア・テクノロジーズ(PLTR)に続くのは、業務プロセスを自動化するロボット技術「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」分野。ユーアイパス(PATH)が要注目だ。AI活用の物流での倉庫作業自動化システムでは、ソフトバンク・グループ(9984)もかかわるシンボテック(SYM)がウォルマート(WMT)をはじめとする大手小売企業を軒並み顧客にして大活躍している。

【香港株】パソコンとスマホの世界的回復を先導する中国企業

 パソコン(PC)のレノボ・グループ、スマホのシャオミの株価が堅調だ。12月5日の終値時点での年初来騰落率は、それぞれプラス45%、プラス35%と高い。レノボは5日に同社会長による保有株の一部売却が嫌気されて10%強下落しており、一時は上昇率が6割を超えていた。

 中国経済先行き不安がけん伝され、「スマホやPCの売れ行きもさえないのではないか」といった世間の不安を一掃する好調ぶり。人民元安に伴う投資資金の引き揚げ懸念もどこ吹く風だ。

 市場調査会社IDCによれば、7~9月の世界出荷台数はパソコンが前年同期比7.6%減の6820万台と7四半期連続で前年を下回ったものの、前四半期比では2四半期連続で増加した。スマホも前四半期比では3四半期連続で増加している。

 PC出荷台数世界首位のレノボ(シェア23.5%)は、7~9月が1600万台で前年同期比5.2%減となるも、前四半期比では2四半期連続で増加し、1~3月のボトムから26%増えている。一方、スマホで韓国サムスン電子、米アップルに次ぐ世界3位のシャオミ(シェア14.1%)は、7~9月の出荷台数が4150万台と既に前年同期比2.4%の増加に転じている。

 7~9月はスマホの上位2社と4位の中国オッポが軒並み大幅な前年割れの出荷台数となった中で、シャオミの孤軍奮闘ぶりが際立つ。

 レノボは「ポケットからクラウドまで」の「ハイブリッドAI」戦略の下、AI搭載PCを中心とした相乗効果が期待される。シャオミはスマホを中心にIoT(モノのインターネット)とともに「人・クルマ・家をつなぐ」エコシステムの構築に注力する構えだ。

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(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

(写真:123RF)

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