海外株式見通し=米国、香港
【米国株】局面転換で出遅れ銘柄狙う
行き過ぎた利下げ期待の熱を冷ますと思われたFOMC(米連邦公開市場委員会)とパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の会見は、市場の想定をはるか上をいく「ハト派」スタンスだった。2024年末のインフレ率も2.4%程度という見通しが示されたことから、足元で4%を下回ってきた米10年国債利回りも3%台半ばを試しやすくなったとみられる。米国株相場は「確変モード」に入った可能性が高そうだ。
とはいえ、時価総額上位の大型ハイテク5銘柄を指す「ビッグ・テック」または7銘柄の「マグニフィセントセブン」なら何でもよいわけでもないだろう。それらの大半は年初来騰落率で既に今年の米国株をけん引する高いパフォーマンスをたたき出した。ここからは市場金利低下に伴う出遅れ銘柄のキャッチアップに狙いを定めたい。
出遅れ銘柄は幾つかに分類される。第1に、「マグニフィセントセブン」の中の出遅れ。電気自動車(EV)のテスラ(TSLA)は15日終値が21年11月の過去最高値から約39%安い水準にある。
第2が高配当利回り銘柄。中でもキャッシュフロー面の不安が小さいものが狙い目だろう。3M(MMM)やウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(WBA)のように「配当貴族」や「配当王」と言われるような長期にわたる連続増配年数の記録を更新し続ける企業もある。
第3に、ウォルト・ディズニー(DIS)はじめ、株価が長期間低迷する中で経営者が変わり、企業改革に乗り出しつつ利益率の改善が見られ始めた「ターンアラウンド銘柄」だ。
そして第4に、金融引締め局面終了の恩恵を受けやすい銘柄も有望だ。これはテクノロジーや人工知能(AI)を駆使して市場シェアを拡大していったものだ。また、再生エネルギーなど政府支援も含めて高い需要を有しながらも、金融引締めに伴う資金調達難で案件進ちょくが遅れていた公益業種などが挙げられよう。
【香港株】マカオのカジノ収入回復傾向
マカオ政府賭博監査・調整局によれば、マカオの11月のカジノ総収入は前年同月の5.3倍の160.43億マカオパカタ(約2930億円)だった。国慶節の連休があった前月比では約18%減となるも、良好な内容と言える。
マカオのカジノは、カジノ経営権が外資に開放されたこともあり、市場規模がラスベガスの約3倍に拡大した。世界最大のマーケットである。カジノ収入は15~16年に習近平指導部が打ち出した「反腐敗・汚職摘発運動」や、中国経済の成長鈍化によって落ち込んだものの、新型コロナ禍前までは劇場やプール、ショッピングセンターなど併設リゾート施設の充実により盛り返す傾向にあった。
23年から10年間のカジノ運営免許が交付された6社は、政府審査の評価が高い順に、MGM中国、銀河娯楽集団(ギャラクシー・エンターテインメント)、金沙中国(サンズ・チャイナ)、メルコリゾーツ、永利澳門(ウィン・マカオ)、澳門博彩控股(SJMホールディングス)である。
これらの中で香港上場企業の23年6月上期決算は、銀河娯楽集団、金沙中国、永利澳門がコロナ規制撤廃とインバウンド(訪中客)回復を背景に最終黒字に転換した。澳門博彩控股は最終赤字が縮小。マカオカジノ収入は、今年7月以降も伸びが加速していることから引き続き業績改善が見通され、コロナ禍前の水準まで伸び代が残る。
それに対し、株価は不動産業界を中心とした内需への悲観論に伴い香港株全体と歩調を合わせて下落基調が続いている。今後は業績改善の織り込みが期待されよう。
※右の画像クリックでグラフ拡大
(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)
(写真:123RF)
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