海外株式見通し=米国、香港
【米国株】生成AI関連、有力銘柄は?
このほど最高値を約2年ぶりに更新したS&P500株価指数のけん引役は、エヌビディア(NVDA)、マイクロソフト(MSFT)、メタ・プラットフォームズ(META)、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)など、生成AI(人工知能)とその基盤となる半導体関連の超大型ハイテク銘柄だ。
生成AIとAI半導体への物色の流れが継続するとした場合、今後はどのような分野に投資すべきなのだろうか。AIをデバイスに直接搭載した「エッジ(オンデバイス)AI」と、そのプラットフォームを手掛けるクアルコム(QCOM)に加え、生成AIに関してさまざまな企業・業界ごとの基盤モデルを構築して外部提供していく、「エンタープライズ生成AI」と呼ばれる事業モデルの先導役であるIBMが、PERから見た割安さも含めて有力銘柄として挙げられる。
もう一つ重要分野は半導体製造装置の「後工程」である。生成AIのように大規模言語モデル(LLM)で大量のデータを機械学習や深層学習に使う場合には、素子や回路配線幅の微細化による高性能化だけでは足りず、機能ごとに「チップレット」に細かく切り分けてパッケージ化すること、チップレットを立体的に組み上げること、それぞれのチップレットのテストなどが重要視される。半導体組み立てやテストといった後工程を受託する数少ない米国企業が、アムコー・テクノロジー(AMKR)だ。
ただ、足元の主要株価指数の上昇に反し、全米アクティブ投資マネージャーズ協会(NAAIM)の会員から報告された株式エクスポージャーを示す「NAAIM指数」は、昨年12月27日の102.71をピークに、今年1月17日には53.54まで低下している。このような逆行現象(ダイバージェンス)は株式市場が調整する前に見られやすいことには注意する必要がある。
【香港株】市場低迷は国有企業系高配当利回り投資の好機
香港市場を代表する株価指数である香港ハンセン指数が、2022年11月1日以来の1万5000ポイント割れまで下落した。中国商務省が19日に発表した昨年の同国への海外直接投資(FDI)は、前年比8.0%減と12年以来の前年比割れとなった。中国のビジネス環境や経済・政治に対する投資家の懸念が背景にあるとみられている。このような中で香港株に投資チャンスを見いだせるのだろうか。
市場を取り巻く環境が厳しくなるほど、香港株の魅力が相対的に増す面もある。折しも、日本株は今年から開始された新NISA(少額投資非課税制度)の成長株投資枠で高配当利回り銘柄への投資が活発化した。ところが、TOPIX(東証株価指数)の構成銘柄のうち大型株と中型株の約500銘柄から構成されるTOPIX500を見ると、22日終値で予想配当利回り5%を超える銘柄はなく、4.5%超が7銘柄にとどまる。
対する香港ハンセン指数構成の82銘柄を見ると、22日終値で配当利回り8%以上が20銘柄ある。そのうち、不動産関連業種を除く国有企業系が11銘柄に上る。中国石油化工(シノペック)が11%台、中国石油天然気(ペトロチャイナ)、中国海洋石油(CNOOC)、中国建設銀行(チャイナ・コンストラクション・バンク)、中国工商銀行、中国神華能源(チャイナ・シェンファ・エナジー)、中国中信(シティック)の6銘柄が9%台、中国銀行・香港(BOCホンコン)、中国銀行(バンク・オブ・チャイナ)、東方海外国際(オリエント・オーバーシーズ)、招商銀行の4銘柄が8%台である。
今年度の市場予想配当性向(予想配当金の予想1株利益に対する割合)を見ると、必ずしも無理をして高配当を維持しているようには見受けられず、減益の際の減配リスクも限定的とみられる。中国国有企業系銘柄は配当利回り投資の好機と言えそうだ。
※右の画像クリックでグラフ拡大
(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)
(写真:123RF)
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