海外株式見通し=米国、香港
【米国株】メタ、アマゾンの収益性改善、不調のテスラ株転換見極めのヒントに
メタ・プラットフォームズ(META)株価が直近の決算発表を受けて大きく上昇した。同日の時価総額が1日で約30兆円増えるという想像を絶する企業価値の向上だ。
同社のCEO(最高経営責任者)が約1年前の決算発表で「2023年は効率化の年になる」と述べた通り、人員削減をはじめとするコストダウンを推進。この結果、売上高総費用比率は22年10~12月の80%から毎四半期低下し、23年10~12月は59%まで低下した。まさに「有言実行」だ。
アマゾン・ドット・コム(AMZN)の株価もメタと同様に決算を受けて大きく上昇した。同社は自前のEC(=Eコマース、電子商取引)物流網を強化することで輸送費を削減。地域ごとに商品を保管し、顧客に近い拠点から配送する仕組みを構築したことで費用を抑える。百貨店チェーンのコールズ(KSS)を返品受付拠点にするなど、新たなアイデアも駆使して収益体質を強めている。
AI(人工知能)を活用した広告事業や、定額のサブスクリプションサービスなどアマゾン躍進の要因は複数あるが、祖業のECの復活が大きい。全体の営業利益率も昨年10~12月が7.8%(前年同期比プラス5.9ポイント)に改善した。
「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる時価総額上位の主要米国株の中では、足元ではEV(電気自動車)のテスラ(TSLA)の株価が下落している。値下げに伴う採算悪化に歯止めが掛からないことが背景にあり、トレンド転換には利益率改善に向けた取り組みの具体化が必要だろう。
【香港株】対中半導体輸出規制とAI半導体銘柄
米政権による中国に対する半導体輸出規制は、先端品の軍事転用への懸念を理由に22年10月に始まった。対象は回路線幅14ナノ(ナノは十億分の一)メートル(nm)以下とされ、中国の半導体産業は窮地に陥ると思われた。しかし、通信機器大手ファーウェイが昨年8月に発売した5G通信対応の新型スマホには、7nmの先端半導体が採用されていた。受託製造(ファウンドリー)の中芯国際集成電路製造(SMIC)が国内で生産したチップだ。
これに危機感を強めた米政府は23年10月、対中先端半導体の輸出規制を強化したものの、規制に抵触しない半導体IC(集積回路)の生産量が米国で増加基調にある。そこで米商務省は、28nm以上の旧世代に当たる「レガシー半導体」についても今年1月から開始した調査終了後に、関税引き上げなどの貿易制限措置に踏み切る可能性が高いとみられる。AI(人工知能)関連の先端品と比べて市場が大きいレガシー半導体への貿易制限の方が、世界的な影響は大きくなるだろう。
中国政府は、政府系ファンド(中国集成電路産業投資基金)を通じて中国大手メーカーへ資金を供給。SMICのほか、ファウンドリー第2位の華虹半導体(フアホン・セミコンダクター)、政府系の中国半導体製造装置最大手の北方華創科技集団(NAURA)、半導体材料メーカーの有研新材料も生産能力増強に取り組むものの、足元ではコストがかさんで株価も下落傾向だ。
他方、米エヌビディア製半導体の調達が難しくなった中国のAI関連大手が国産品への切り替えを急ぐ中で、海光信息技術は新たなAI半導体の出荷を始め、百度やアリババとAIインフラ構築を進めていると公表した。中国半導体産業の期待を背負うかのように株価も相対的に堅調に推移している。
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(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)
(写真:123RF)
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