海外株式見通し=米国、香港

【米国株】「ポスト・エヌビディア」はどこに?

 人間のような自然な会話ができる対話型生成AI(人工知能)サービスのChatGPTが公開されたのが、2022年11月。FRB(米連邦準備制度理事会)による金融引締めで下落基調だった米国主要株価指数もその時期で底入れ・反転し、それ以降は利下げ観測とともに堅調に推移している。

 生成AIの急速な普及と各企業の投資拡大は、1990年代後半のITバブルをほうふつとさせる。エヌビディア(NVDA)が生成AI活用のための機械学習・深層学習に必要な画像処理半導体(GPU)で世界標準の地位を占めるのは、90年代後半にマイクロソフト(MSFT)のWindows(ウィンドウズ)がOS(基本ソフト)の世界標準となったことに類似している面もある。

 さらに、94年にインターネット書店として設立のアマゾン・ドット・コム(AMZN)がITを用いた新たな事業モデルを提供したように、これから生成AIを活用した事業が本格的に展開されてゆくにつれて「ポスト・エヌビディア」銘柄もそのような企業の中から生まれる余地がある。財務状況が改善しているグロース(成長)銘柄の中にその候補を見いだせる可能性がありそうだ。

 今の生成AI関連が90年後半のような大相場へと発展していくかどうかを占う上では、今週の動向がカギを握る。5日のスーパー・チューズデー以降、トランプ前大統領の再選を意味する「もしトラ」に伴う政策不透明感は市場心理を冷やす可能性がある。また、6~7日に行われるパウエルFRB議長の上・下院金融委員会証言は、8日発表の2月の雇用統計に至る一連の雇用関連経済指標(2月ADP雇用統計、1月求人件数、週次新規失業保険申請件数)とともに、生成AI関連銘柄が買われやすい前提となる長期金利動向に大きな影響を及ぼすかもしれない。

 他方、アップル(AAPL)の株価終値が引き続き200日移動平均線を下回るほか、グーグルの持株会社アルファベット<GOOG>も100日線を下回ってきており、主要銘柄が崩れつつある点は引き続き要警戒だろう。

【香港株】全人代は防衛費増額目立つ

 中国で国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が5日、北京で開幕した。不動産不況による経済不振が色濃い状況下でも、中国国務院が5日に発表した24年の国防費(中央政府分)は前年比7.2%増の1兆6655億元と、3年連続で伸び率が7%を超えた。

 李強首相が全人代で行った「政府活動報告」には、「台湾問題解決の基本方針を貫徹し、1つの中国原則と『92年コンセンサス』を堅持する」と盛り込まれた。この「92年コンセンサス」とは、92年に取り決めたとされる、中台間の会談における口頭の合意を指すが、中国側は「1つの中国」原則を意味する立場の一方で、台湾の国民党関係者は「『1つの中国』はそれぞれ解釈することが可能」というスタンスを取ってきた。さらに、台湾の民進党政権ではこのような玉虫色の合意そのものに懐疑的と、立場が三者三様だ。

 米国にはロッキード・マーチン(LMT)を筆頭に、防衛関連6大企業が知られる。一方で、中国本土上場または香港H株銘柄で防衛関連として注目される企業としては、(1)中船海洋与防務装備(600685/上海A、00317/香港)、(2)中国船舶重工[チャイナ・シップビルディング・インダストリー](601989/上海)、(3)中国航空科技工業(02357/香港)が挙げられる。

 中船海洋与防務装備は、中央企業の中国船舶集団傘下で造船と海洋エンジニアリングに従事。軍用艦や海上警備艇などを建造する。中国船舶重工は、中国船舶集団傘下の造船会社で、艦艇、軍艦用ディーゼルエンジンなどを手掛ける。中国航空科技工業は軍需企業の中国航空工業集団傘下の航空機メーカーで、ヘリコプターや練習機、航空機部品などが主力だ。

 これら3社と、中国本土(上海/深セン)に上場する中国A株の上位300銘柄に連動するCSI300指数の日次終値について22年末を100とする相対指数で見ると、中国航空科技工業は昨年7月の第三者割当増資実施が響いたが、ほかの2企業の株価は堅調に推移している。

※右の画像クリックでグラフ拡大

(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

(写真:123RF)

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ