英中銀、7対2の賛成多数で金利据え置き―総裁は6月利下げの可能性排除せず(1)

経済

2024/5/10 9:25

<チェック・ポイント>

●ベイリー総裁、BOEは市場予想よりも大幅に利下げする可能性を示唆

●ベイリー総裁、利下げ前にあと2回のデータを入手する必要性を指摘

●ベイリー総裁、年内利下げが市場予想の2回を超える可能性を指摘

 イングランド銀行(英中銀、BOE)は9日、金融政策委員会(MPC)の結果を発表し、政策金利を5.25%に据え置くことを9委員中、7対2の賛成多数で決めたことを明らかにした。据え置きは市場の予想通りだった。

 金利据え置きは6会合連続。BOEの利上げサイクルは21年12月から今年8月までの14会合連続で止まったが、現行の5.25%の金利水準は依然、08年2月以来、約16年ぶりの高水準となっている。

 市場では9人の政策委員のうち、タカ派とハト派の割合が前回3月会合時からどう変化するかに注目していたが、今回の会合では、9人の政策委員のうち、タカ派(インフレ重視の強硬派)のアンドリュー・ベイリー総裁ら7委員(前回は8人)が据え置きを支持。

 他方、前回会合で据え置きを支持したデーブ・ラムスデン副総裁が予想通り、0.25ポイントの利下げを主張するスワティ・ディングラ委員に加わり、利下げ支持が2委員(前回は1委員)に増え、BOEのハト派姿勢が一段と強まった。利下げ支持派はその根拠について、「求人の減少が続き、名目賃金の伸びが鈍化するなど、需要が低迷する中、インフレ見通しは中期的に物価目標に持続的に戻る下振れリスクになっている」と主張している。

 ベイリー総裁は金融政策決定の公表後の会見で、インフレや経済に関するデータ次第では、早ければ6月利下げ開始の可能性について、「たとえデータが完全に予想と一致したとしても、インフレ持続(高止まり)リスクが後退しているかを判断する必要がある」とした上で、「(6月利下げは)既成事実ではないが、会合ごとに新たな決定が下される」、また、「BOEは金利引き下げのペースやどこまで引き下げるかについて何の先入観も持っていない」とし、現時点では6月利下げの可能性を容認も排除もしないとの認識を示した。

 総裁は利下げ開始のタイミングについて、ロンドンの金融街(シティ)の予想よりも速いペースで利下げする可能性があることを明らかにした。総裁は、「インフレ率が物価目標の2%上昇を大幅に下回るのを避けるため、利下げが行われる可能性が高い」とし、その上で、「インフレ見通しが2%上昇の物価目標と一致している兆候を注意深く見守る」としている。具体的には総裁は利下げ前にあと2回(4月と5月)のインフレと雇用に関するデータを入手する必要性を指摘した。

 さらに、総裁は、「インフレ率を高すぎず、低すぎずに2%上昇の物価目標付近に確実に維持するためには、おそらく今後数四半期にわたり、今の市場予想よりも(大きく)金利を引き下げ、制限的な金融政策スタンスをやや緩和する必要がある」とし、年内の利下げが市場予想の2回を超える可能性を指摘した。

 利下げペースが速まる根拠について、総裁はインフレを押し上げた世界的な大きなショックが薄れていることや、英国のインフレ率が3%台の上昇率と、かなり、物価目標に接近してきていることを指摘した上で、「現在、輸入コストの上昇の多くが消費者に波及しているということは、今後、外部からのインフレ圧力が弱まることを意味している」、また、「インフレが賃金や物価の上昇につながるという第2ラウンド効果は一段と早く薄れる」とし、インフレに対する認識が変わったことを挙げている。

 英株市場では6月利下げ観測が強まったため、FTSE100種総合株価指数が一時、0.5%上昇、過去最高値を更新した。

 市場では利下げ開始時期を6月から8月のどちらかに設定する強力なシグナルが示されるとの憶測が高まっている。この背景にはスナク首相が率いる与党・保守党が先週の地方選挙で惨敗、今秋の総選挙で苦戦が予想されているため、早期利下げにより有権者の保守党支持を回復させたいというベイリー総裁への政治圧力が高まっていることがある。短期金融市場では会合後、6月利下げ開始の確率を40%から50%に引き上げ、8月までの利下げを100%織り込んだ。年内に2回超の利下げ(1回を0.25ポイントと換算)を予想している。

提供:ウエルスアドバイザー社

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