(再送)英中銀、7対2の賛成多数で金利据え置き―総裁は6月利下げの可能性排除せず(2)

経済

2024/5/10 9:26

<チェック・ポイント>

●ベイリー総裁、BOEは市場予想よりも大幅に利下げする可能性を示唆

●ベイリー総裁、利下げ前にあと2回のデータを入手する必要性を指摘

●ベイリー総裁、年内利下げが市場予想の2回を超える可能性を指摘

 ただ、市場では利下げ開始のタイミングではMPC内で意見がまとまっていないと見ている。前回会合でインフレ高止まりの長期化懸念から利上げを主張した超タカ派のジョナサン・ハスケルとキャサリン・マン、ミーガン・グリーンの3委員は英国立統計局(英国立統計局(ONS)が最近1-3月期GDP伸び率が従来予想の前期比0.1%増から同0.4%増に上方修正したことから、現在の5.25%の金利下でも成長は可能であり、利下げを急ぐ必要はないと考えている。また、現在、熟練労働者不足が広がっている中で、今後、賃金上昇のリスクが残っているため、今年後半にインフレが再加速する懸念が根強いため、早期利下げには消極的だ。

 5月経済予測によると、3月のインフレ率は3.2%上昇と、2月の3.4%上昇から鈍化したが、エネルギー関連のベース効果の巻き戻しにより、今年下期には約2.5%上昇になると予想している。ただ、前回2月予測の2.75%上昇から上方修正(改善)された。地政学的要因による短期的なインフレ見通しは引き続き上振れリスクとしているが、中期的にはインフレ率は26年4-6月期に1.9%上昇(前回予測は2.2%上昇)、27年4-6月期に1.6%上昇と、物価目標を下回ると予想している。

 景気見通しについては、24年1-3月期を前期比0.4%増と予想、前2四半期のマイナス成長を脱却、さらに24年4-6月期を同0.2%増(前回2月予測は0.1%増)、25年4-6月期を同0.9%増(同0.6%増)、26年4-6月期を同1.2%増(同1%増)と、いずれも上方修正。新たに27年4-6月期を同1.6%増と予想している。ただ、経済予測期間中に回復するにもかかわらず、需要の伸びはその期間のほとんどを通じて潜在的な供給の伸びよりも弱いままであると予想している。

 また、市場では利下げ開始に伴い、量的金融収縮(金融引き締め)の一環として行われている保有国債の売却(年間1000億ポンドペース)を9月以降年内に一時停止する可能性があると見ている。

 BOEは声明文で、金利据え置きを決めた理由について、インフレ圧力が緩和していることを指摘した。インフレリスクについて、BOEは、「インフレ率はベース効果と財価格の影響により、引き続き低下している。金融政策の抑制的なスタンスが実体経済を圧迫し、雇用市場の緩和をもたらし、インフレ圧力を抑制している」とした上で、「「インフレ率は依然として高止まりしているものの、予想通りおおむね鈍化している」と判断している。前回会合時の「インフレ率は高止まりし続けている」からトーンダウン、ハト派寄りにシフトした。

 市場が注目した今後の金融政策のフォワードガイダンス(金融政策の指針)について、BOEは、前回会合時と同様、「23年秋以降、インフレ率が物価目標の2%上昇を超えて高止まりするリスクが消えるまで、金融政策を長期間抑制する必要があると判断している」とした上で、「金融政策は中期的にインフレ率を持続的に2%上昇の物価目標に戻すため、十分長い期間にわたって、十分制限的であり続ける必要がある」との文言を残した。

 また、今後の利下げ開始の可能性について、BOEは前回会合時と同様、「インフレ率を持続的に2%上昇の物価目標に戻すため、経済指標に従って金融政策を調整する用意がある」とし、また、「政策金利をどれくらいの期間、現在の水準に維持すべきかについて検討を続ける」とし、今後の利下げ開始に向けて準備を進めるハト派のスタンスを維持した。市場では政策変更に必要なインフレの高止まりに関するデータの解釈を巡って、委員の意見が異なるため、検討が必要になっていると見ている。

 次回の会合は6月20日に開かれる予定。

提供:ウエルスアドバイザー社

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