英下院、ジョンソン首相のEU離脱新協定の批准先送り―EU離脱日延期へ

経済

2019/10/21 12:22

 英国のメイ前首相がEU(欧州連合)と合意した離脱協定に代わるジョンソン英首相のディール(新離脱協定)をめぐる英・EU離脱協議はタイムリミットとされた10月17日のEUサミット(加盟27カ国の首脳会議)初日の土壇場でかろうじて合意した。だが、ジョンソン首相は19日に開かれた臨時の下院本会議で新離脱協定の批准に失敗し、同日夜、ベン法(離脱日延期法、ノーディール阻止法)に従って、EUのトゥスク欧州理事会議長宛てに離脱日の延期を要請する書簡を送付した。

 英政権は10月31日のEU離脱をまだ完全には断念しておらず、ジョンソン首相は21日に2度目の新離脱協定の批准動議を議会に提出し、31日午後11時までに全ての離脱関連法案を議会通過させる最後の賭けに挑む考えだ。ただ、地元メディアは、バーコウ下院議長がすべての新離脱協定法案を31日までの議会で成立させるのは困難と判断し、不採用とする可能性が高いとみている。その場合、新離脱協定の批准先送りが確定し、離脱日も最長で20年1月末まで延期される見通しとなる。半面、批准動議が採用・可決し、10月末までにすべての離脱関連法案が議会を通過すれば、EUに離脱日延期を要請したあとでも取り消すことができる。

 新離脱協定が19日に批准できなかったのは、この日、「合意なきEU離脱」の回避を目指す最大野党の労働党や自民党、SNP(スコットランド国民党)などの野党各党や保守党造反グループの一部が超党派で提出した離脱日延期動議(レットウィン動議)が322票対306票の賛成多数で可決されたためだ。

 レットウィン動議とは、新離脱協定に関するすべての法案が議会で可決するまで、議会はジョンソン首相のディールを批准しないというもの。議会が批准しない場合、EUに離脱日を20年1月末まで延期要請することを政権に義務付けている。

 レットウィン動議の可決直後、ジョンソン首相は議会で、この動議には法的拘束力がないとして、一度は「EUとは期日延期の交渉をしない」と突っぱねた。しかし、首相は以前、9月中旬にスコットランド高裁でベン法に従って離脱延期を行うと証言しているため、期日延期に従わない場合、法廷侮辱罪に問われる恐れがあり、ジョンソン首相はやむなく、離脱日の延期を要請する書簡をEUに送付した。

 ジョンソン首相はEUに3通の書簡を送付し、最後まで抵抗姿勢を示した。1通目は型通りの離脱延期の要請だが、首相の署名はない。2通目で首相は「離脱日延期を認めることは間違いだ」とくぎを刺し、本心は延期反対という内容になっている。3通目は延期に反対する理由を説明するものだ。

 EUは合意なき離脱を回避するため、延期を容認する方向だ。英紙ガーディアンは19日、「EU関係者は17日のEU首脳会議(サミット)で、フランスを除いたEU加盟国の首脳は延期要請があれば承認することで合意ができていたと語った」と報じ、延期の可能性が高いとした。

 EUが離脱日の延期に同意した場合、11月14日に開かれる予定の欧州議会までに英国議会が新離脱協定を批准すれば、欧州議会も批准することが可能になる。その場合、11月30日が新しい離脱日となる。10月末から1カ月遅れで離脱できるとなれば、ジョンソン首相も延期に応じる可能性がある。

 20年1月末までの延期となった場合には、ジョンソン首相は10月19日の議会でも「離脱日の延期は英国のEU残留に伴うコストが増加し、また、英国とEUの双方にとっても利益にならない」と強く反発しており、事態の打開のため、ジョンソン首相は総選挙を実施して仕切り直す以外に選択肢がないという論調も出始めている。

 一方、最大野党の労働党は20日、新離脱協定に対する新たな修正動議として、ジョンソン首相のディールの是非を問う国民投票の実施を議会に提案する方針を明らかにした。国民投票には22週間かかるとしており、この修正動議が可決されれば、EUとの調整が必要だが、離脱日の長期延期で決まる可能性がある。

提供:モーニングスター社

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