【株式新聞・総力配信】市場再編議論は大詰め(1)―「次世代TOPIX」に熱視線
2019/12/2 14:00
金融庁の金融審議会「市場構造専門グループ」の最終報告書が年内にも提出され、いよいよ方向性が定まる見通しの東証の市場再編。市場区分を現在の四つから三つに絞る構想に注目が集まる一方、もう一つの気になる点が現行のインデックス(指数)に代わる次世代のTOPIX(東証株価指数)をめぐる議論だ。将来的な「日本株」の命運を握る存在ともなり得るだけに、市場関係者の関心は強い。
<「流通株式時価総額」で絞り込み>
市場再編の目玉は、東証1、2部とジャスダック(グロース、スタンダード)、東証マザーズに分かれる現在の四つのマーケットを「プライム」「スタンダード」「グロース」(いずれも仮称)の三つに組み替えるプラン。
時価総額や流動性、ガバナンスといった点で世界の機関投資家の投資対象にふさわしい水準を満たすプライムに対し、スタンダードは一定の規模・統治レベルを求める。一方、グロースは成長性を秘めたベンチャー企業で構成する現在のマザーズ市場のイメージだ。
東証1部に相当するプライムをめぐっては、以前に時価総額250億円で線引きする意見が漏れ伝わったが、直近の金融審の会合では具体的な数値に踏み込んでいない。また、既存の1部上場企業は、時価総額や流動性に加えて想定される、社外取締役の数・割合、英文開示の実施といった基準への対応も含めて適切と考える市場区分を自ら選択する案が示された。
こうした中、金融審はTOPIXも俎上(そじょう)に載せ、銘柄を選別した指数への刷新が望ましいとしている。現状では東証1部に上場する全銘柄を組み入れる同指数だが、市場での流動性をより重視した「流通株式時価総額」などの条件によって構成内容を絞り込む方向。その際、インデックスの対象企業群はプライムだけではなく、スタンダードからも選定できるようにするという。
11月末時点で上場企業数が2157社に上る東証1部は、1銘柄当たりの時価総額が先進国の主要市場と比べて低く、改良余地があるのは事実。TOPIXをバージョンアップすることは必然的な流れでもある。指数連動の運用をする投資家にとっても、より使い勝手の良いインデックスになることが期待される。
<変ぼうするNYダウの顔触れ>
ここでいったん、米国の状況に目を移そう。30銘柄で構成される代表的な指数のNYダウは算出以来ほぼ右肩上がりで上昇を続けている。一方、その中身を見ると時代によって銘柄の顔触れががらりと変わっていることが分かる。例えば5年前にはアップルの姿はなく、ここ10年ではシスコシステムズやゴールドマン・サックスなど9銘柄がシティグループやGM(ゼネラル・モーターズ)などに代わって新たに採用された。マイクロソフトやインテルが組み入れられたのは99年だ。
昨年には、1896年の算出当初から採用されてきたGE(ゼネラル・エレクトリック)がついに外れ、今年はダウ・デュポンの分社化に伴いデュポンの名も構成銘柄のリストから消えた。GE、GMといったかつて国を象徴した企業でも、時代にそぐわなくなればより適した有力企業と入れ替える。この仕組みが、米国株の強さを陰で支えてきたのは間違いない。
日本に話を戻すと、新TOPIXの創設は米国式の市場浮揚策を取り入れるチャンスになり得る。構成銘柄の絞り込みは、資金の二極化を招くという意見も確かにある。だが、強い指数にはマーケット全体が引っ張られるものだ。
<「指定銘柄」の時代>
日本に昔、「指定銘柄」という制度があった。各証券取引所が時代を反映する人気銘柄を選び、信用取引におけるさまざまな優遇措置を適用することで取引の活発化を図ったシステムだ。
指定銘柄は指数ではないものの、同制度が採用された78年10月~91年9月の13年間で日経平均は4倍(高値時点では7倍)に値上がりした。仮に、指定銘柄の考え方を引き継ぎ、NYダウのように厳選した有力銘柄で構成する指数が生み出されていれば、バブル崩壊後の日本株の印象も違ったのかもしれない。
市場再編によって、日経平均の銘柄入れ替えルールも見直されるという見方も浮上している。きっかけとなったのは、今年7月の臨時入れ替えにおけるバンダイナムコホールディングス<7832.T>の採用だ。
みなし額面換算の株価水準の高い同社株は指数の構成ウエートへの影響が大きく、過去の傾向からは考えにくい選定だった。大和証券の橋本純一シニアクオンツアナリストはリポートで、「国を代表する銘柄としての要件の方が重視された」とし、市場再編の指針が影響した可能性を指摘している。
提供:モーニングスター社
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