<新興国eye>インドネシア中銀、予想通り金利据え置き―預金準備率引き下げで融資拡大へ

新興国

2023/7/26 8:47

 インドネシア中央銀行(BI)は25日の理事会で、通貨ルピアの対ドル相場の変動(下落)圧力を緩和するため、主要政策金利の1週間物リバースレポ金利を5.75%に据え置くことを決めた。

 また、中銀は過剰流動性を吸収するための翌日物預金ファシリティー金利(FASBIレート)も5.00%、翌日物貸出ファシリティー金利も6.50%と、いずれも据え置いた。

 金利据え置きは市場の予想通りだった。市場では国内景気が堅調を維持、インフレが低下傾向にあるものの、FRB(米連邦準備制度理事会)の7月と9月の追加小幅利上げによるルピア相場の下押し圧力を緩和するため、中銀は現状維持を決めると予想していた。焦点はいつまで据え置きを続けるかで、市場では23年末まで据え置き、利下げ転換は24年になると見ている。金利水準は依然、19年以来4年ぶりの高水準となっている。

 中銀はインフレ加速を受け、22年8月会合で3年9カ月ぶりに利上げに転換、23年1月会合まで6会合連続で金利を引き上げたが、利上げ幅が計2.25ポイントに達したことを受け、これまでの利上げ効果を見るため、2月会合で22年7月以来7カ月ぶりに金利を据え置いた。これで金利据え置きは6会合連続。

 中銀は会合後に発表した声明文で、前回6月会合時と同様、「政策金利を5.75%に維持することは23年のインフレ率を前年比2.0-4.0%上昇、また、24年には同1.5-3.5%上昇の物価目標のレンジ内に抑制するという金融政策スタンスと一致する」とし、引き続き、これまでの利上げが経済やインフレに及ぼす効果を見たい考えを改めて強調した。

 また、中銀は前回会合時と同様、「金融政策の焦点は、輸入インフレを抑制し、世界的な金融市場の不確実性の影響を軽減するため、ルピア相場の安定を強めることにある」とし、ルピア相場への下押し圧力を緩和するため、金利を据え置いたとしている。ペリー・ワルジヨ総裁は会見で、「輸入インフレを管理し、世界的な金融市場の不確実性による波及効果を軽減するため、政策の焦点はルピアの安定強化にある」と述べている。

 最近のルピア相場について、中銀は、「ルピア相場は中銀の相場安定化政策に沿って抑制されている」とした上で、今後の見通しについては前回会合時と同様、「今後、世界的な金融市場の不確実性が緩和し、インドネシア経済の力強い成長見通しと、低インフレ、国内金融資産の魅力的な利回り(による経常黒字と海外資本の流入に支えられ)、ルピアの上昇が続くと予想している」としている。

 今後の金融政策について、中銀は前回会合時と同様、「景気回復の勢いを維持するため、ポリシーミックス(複数の経済政策手段の一体運営)を強化する」とした上で、「引き続きルピア安定化政策を強化、輸入インフレを抑制、国際金融市場の不確実性(欧米の銀行危機)がルピア相場に及ぼす影響を緩和する」とし、これまで通り、ルピア安阻止のため、市場介入や流通市場でのSBN(短期国債)の売買を通じたツイストオペ(短期債を売却して長期債を購入、バランスシートを拡大しないで保有債券の期間を長期化させるオペ)を継続、SBNの短期の利回りを高め、海外からのポートフォリオ投資の魅力を高めていくとしている。

 また、中銀は23年の成長率目標(4.5-5.3%増)を達成するため、一般の商業銀行やシャリア銀行(イスラム法に則って銀行業務が行われるイスラム系銀行)などを対象とした流動性強化政策(KLM)の実施を決めた。これは10月1日から銀行が中銀に積み立てる預金準備率を引き下げることにより、47兆ルピアの流動性を創出、銀行融資の拡大につなげるもの。市場では中銀は利下げに消極的で、それよりも信用の増加を選択したと見ている。

 次回会合は8月23-24日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、アセアン50<2043.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

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