海外株式見通し=米国、香港

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2023/8/3 9:30

【米国株】好調な7月、8~9月の動向は?

 米国株は6、7月と好調に推移した。これに対し、市場関係者の間では「8月は季節的にかなり弱い傾向にあることを誰もがある程度分かっている」という声も聞かれる。

 米国の代表的な株価指数であるS&P500指数について2022年末までの20年間のデータによれば、過去20年間における月間平均騰落率ランキングは、1位から4月(+2.27%)、7月(+2.21%)、11月(+1.76%)、10月(+1.30%)、3月(+0.99%)、12月(+0.91%)、5月(+0.43%)、8月(+0.08%)、2月(+0.04%)、6月(-0.44%)、1月(-0.47%)、9月(-0.52%)である。

 8月は6、7月と比べるとかなり弱いものの、平均ではプラスを維持している。また、7~9月の3カ月間で見た場合、平均的には「上昇→横ばい→下落」が明確に出やすい四半期となる傾向がある。今年も7月は前月末から28日終値までの騰落率が3.11%上昇。1年の中でも特に強い傾向の7月の過去平均を、今年の7月は大幅に上回った。それに続く8、9月への影響についても気になるところだ。

 生成AI(人工知能)普及に伴う需要は現在、対話型AIの「チャットGPT」が先導しているが、企業が実際の利用に関してどのように使えばよいのかといった悩みも聞かれる。生成AIについて、医療・創薬への活用のほか、企業が独自のデータを反映し、個々の企業の要望・事業分野にフィットしたプラットフォームの需要が高まっていく展開が想定される。老舗ITのIBMが今年5月に発表した法人顧客向けAIの「ワトソンX」はそうした要望に応えるものだ。

 商業用不動産の価格動向に関し、調査会社グリーンストリートが算出する商業用不動産価格指数(CPPI)の月次推移(前年同月比)を見ると、テレワークに慣れた労働者の一部が出社しなくなったことを背景に、今年6月まで8カ月連続で10%超のマイナスとなった。リーマン・ショック前の08年以来の状況だ。米国株投資において8、9月に向けて注意が必要だろう。

【香港株】香港ドル発券銀行~英国金融引締めの追い風

 中国人民銀行は政策金利で新規貸出金利の指標となるローンプライムレートの引き下げなどを通じた金融緩和を鮮明化している。不動産不況に加え、消費者物価指数(CPI)上昇率0%近辺の「デフレ懸念」、一方で為替の人民元安につながる懸念にも配慮する難しいかじ取りを迫られている。

 他方、3日に中央銀行による政策金利が発表される英国では、前回(6月22日)の金融政策員会(MPC)で0.5%ポイントに利上げ幅が拡大され、政策金利が5.0%に達した。今回も0.25%ポイントの利上げが有力視されているものの、利上げサイクルの最終局面となるのではないかとの期待も台頭している。

 ただ、6月のCPI上昇率が前年同月比6.9%とほかの欧米先進国と比べて水準が高く、10年国債利回りが昨年10月の水準を足元で上回るなど、債券市場では利上げ打ち止め感が出ていない。

 香港上場の銀行株の中で、香港ドルの発券銀行の地位を占める香港上海銀行およびスタンダード・チャータード銀行を傘下に擁する銀行グループはそれぞれ、HSBCホールディングス、スタンダード・チャータードである。いずれもロンドンに本拠地を置き、香港・中国を中心としたアジア、英国を中心とした欧州を主要エリアとして事業展開している。

 両行ともに預貸の利ザヤである純金利マージンが四半期を追うごとに拡大しており、英国における金融引き締めサイクルの打ち止めが遅れるほど業績面では優位に働くとみられる。

 両銀行グループの中では、貸出残高に占める欧州比率が高いHSBC(うち約8割が英国)の方が英国の金融引き締めの恩恵を受けやすいとみられる。HSBCは今年3月、経営破たんした米シリコンバレーバンク(SVB)の英法人を1ポンドで買収した。さらに、フランスのリテール事業の売却取りやめに伴う減損損失の戻し入れなどにより経費率が改善するなど、業績面で恩恵を受けている。市場予想の23年度配当利回りが7%台と高水準であることも注目点だ。

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(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

(写真:123RF)

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