<新興国eye>タイ中銀、予想通り0.25ポイント引き上げ―利上げサイクル終了を示唆

新興国

2023/8/3 8:53

 タイ中央銀行は2日の金融政策委員会で、インフレ上ブレリスクを緩和するため、政策金利である翌日物レポ金利を0.25ポイント引き上げ、2.25%とすることを全員一致で決めた。市場の大方の予想通りだった。

 市場の一部では最近はインフレ低下が進んでいるため、22年8月から始まった利上げサイクルは8月会合で利上げが一時停止されると見ていた。

 中銀は20年6月から22年6月まで16会合連続で政策金利を据え置いたが、通貨バーツ安とインフレ上ブレリスクが強まったとして、22年8月会合で18年12月以来、3年8カ月ぶりに利上げ(0.25ポイント)に転換した。これで利上げは7会合連続となり、利上げ幅は計1.75ポイントに達した。2.25%は9年ぶりの高水準となる。

 ただ、中銀は会合後に発表した声明文で、前回会合時に使われた、「タイ経済とインフレの見通しを踏まえると、段階的な金融政策の正常化(小幅利上げ)の継続が適切であると判断した」との文言を削除した。市場では利上げサイクルがほぼ終了した明確なシグナルと見ている。

 追加利上げを決めた理由について、中銀は、「インフレは低下し、上ブレリスクはあるものの、物価目標の範囲内(前年比1-3%上昇)で安定すると予想される」としたが、「依然、上ブレリスクに注視する必要がある」とし、その上で、「景気拡大が続き、たるみ(生産設備や労働力などの余剰)が縮小する中、金融政策はインフレを物価目標の範囲内に持続的に維持し、将来の金融的不均衡(株価バブルなど資産価格の急上昇)リスクの蓄積を予防、長期的な金融の安定にも配慮する必要がある」とした。

 さらに、中銀は、「金利引き上げは、かなり不確実な見通しを考慮すると、政策余地を残す上で役に立つ」とし、今後の金融政策の調整余地を残す観点からも利上げを決めたとしている。

 インフレ見通しについては、「インフレ率の全体指数はエネルギー価格の低下や、生活費補助金、ベース効果により低下したが、これら一時的要因の影響が剥離する今年下期には上昇に向かう」とし、今年後半からのインフレ上ブレリスクを指摘。また、「コアインフレ率はやや低下したが、高止まりする。インフレ上ブレリスクはエルニーニョ現象による食品価格の上昇に起因しており、景気拡大が続く中で、コスト上昇により価格転嫁が加速する可能性がある」と、警戒感を示している。

 バーツ相場については、「FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策の見通しや、中国の経済見通し、国内政治の不確実性(新政権への移行)により、バーツはドルに対し変動した」と指摘するのにとどまり、主にドル安を背景にバーツ高が進んでいるため、前回会合時のようなバーツ安懸念を示す文言は削除された。

 今後の金融政策について、中銀は、、前回会合時に使われた、「経済成長とインフレの見通しが現在の評価から変化した場合、金融政策の正常化(利上げ)のタイミングと規模を調整する用意がある」との文言を削除、その代わりに、「金融政策はインフレ率が物価目標の範囲内に持続的に収束することを確実にし、また、長期的な金融の安定にも十分に配慮する必要がある」とした。その上で、中銀は会合ごとに経済データを検証して政策決定を行う考えを示している。

 次回会合は9月27日に開催される予定。

<関連銘柄>

 タイSET<1559.T>、アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、

 上場MSエマ<1681.T>、アセアン50<2043.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

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