海外株式見通し=米国、香港
【米国株】財政リスクでインフラ関連株のパフォーマンス安定へ
このほど発表された7月のCPI(消費者物価指数)の上昇率は市場予想を下回ったものの、10年国債利回りは4%台で高止まりしている。格付け会社のムーディーズは、商業用不動産向け融資に係る懸念などから米中堅・中小銀10行のレーティングを1段階引き下げるなど銀行システムにも不安が残る中、利上げ打ち止め観測も一理ある状況だ。
ところが、10日の30年国債の四半期入札で応札が不調だったことや、昨年10月~今年7月の累積財政赤字が前年同期比2.2倍と高水準となったことなどを受けて、財政の持続可能性が市場の主要テーマに「格上げ」されつつある。なお、米国は財政年度が10月から始まる。米国株の8、9月の過去の平均月間騰落率がほかの月と比較して低パフォーマンスとなる「アノマリー(説明のつかない法則)」との関連性もうかがわれる。
利上げ打ち止め観測は短期債利回り低下につながりやすい一方、財政リスクを受けて長期債利回りは低下しにくくなっている。6月下旬に米国債利回り格差で1%を超えていた10年と2年の長短逆イールドは、11日終値で0.74%まで縮小。長期債利回りの高止まりは大型ハイテク株や半導体関連といったグロース(成長)銘柄への逆風になりやすい。米バイデン政権によるインフラ投資雇用法、気候変動対策のインフレ抑制法、半導体開発・生産支援に係るCHIPS法など向こう10年近く大型財政支出が続く見通しを踏まえると、その恩恵を受けやすいインフラ投資関連銘柄のパフォーマンスが長期的に安定する可能性がある。
中国政府が10日、米欧や日本への海外団体旅行を解禁した。日本の観光庁による2023年4~6月の訪日外国人消費調査では、中国からの訪日客は1人当たり平均旅行支出額が英国人客に次いで2位と高い。ホテルチェーンやチケット予約など旅行関連、または高級ブランド関連等の銘柄への恩恵は米国株でも期待されよう。
【香港株】熊本とんこつラーメンと火鍋チェーン
「熊本ラーメン」といえば、焦がしたり揚げたりしたニンニクのチップやマー油(ニンニクを揚げた油)と豚骨スープの組み合わせ、そして具材にキクラゲが入った特徴があり、日本でも全国的に根強い人気がある。中国でも味千(アジセン・チャイナ・ホールディングス)が、熊本の重光産業から中国本土と香港での「味千ラーメン」の経営権を取得し、熊本ラーメンをチェーン展開している。
同社の22年12月期決算は、売上高が前期比28.4%減の14.29億元、営業損益が1.59億元の赤字となった。ただ、22年末時点の現金および現金同等物は14.65億元と豊富で、株式時価総額は(22年末で8.01億元、23年8月15終値で10.77億元)はこれを下回っている。また、時価総額に純有利子負債額(有利子負債額から現金や非事業性資産を控除)を加えた「企業価値(EV)」は22年末で20百万元の赤字だったのに対し、23年8月15日終値ではようやく黒字を回復した。株価は割安水準にとどまっていると言えよう。
日本でも中国の鍋料理である「火鍋」が、辛いだけでなくコクがある「ウマ辛」だしの効いた「中国版しゃぶしゃぶ」として人気化している。ハイディラオ・インターナショナルは「ハイディラオ」ブランドで火鍋料理レストランをチェーン展開。さまざまな接客サービスにより差別化を図っている。22年12月末店舗数は1371店と前年末比で減少したものの、中国本土が同20店舗増。海外事業は、子会社だった特海国際(スーパーハイ・インターナショナル)が22年12月30日に、資金調達を伴わない紹介形式で香港市場に分離上場した。
これに伴い、日本を含むその他海外の約110店舗(22年末時点)は特海国際の運営となった。ハイディラオの22年12月期決算は、売上高が前期比20.6%減の310.38億元となった一方、営業損益が黒字に転換した。不採算店舗閉鎖に伴う損失処理の反動が黒字につながった。また、部門別で出前(デリバリー)の売上高が2倍に拡大した。
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(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)
(写真:123RF)
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