<新興国eye>インドネシア中銀、予想通り金利据え置き―ルピア建て証券発行へ

新興国

2023/8/25 8:53

 インドネシア中央銀行(BI)は24日の理事会で、通貨ルピアの対ドル相場の変動(下落)圧力を緩和するため、主要政策金利の1週間物リバースレポ金利を5.75%に据え置くことを決めた。

 また、中銀は過剰流動性を吸収するための翌日物預金ファシリティー金利(FASBIレート)も5.00%、翌日物貸出ファシリティー金利も6.50%と、いずれも据え置いた。

 金利据え置きは市場の予想通りだった。市場では国内景気が堅調を維持、インフレが低下傾向にあるものの、FRB(米連邦準備制度理事会)の追加小幅利上げによるルピア相場の下押し圧力を緩和するため、中銀は現状維持を決めると予想していた。市場では23年末まで据え置き、利下げ転換は24年になると見ている。金利水準は依然、19年以来4年ぶりの高水準。

 中銀はインフレ加速を受け、22年8月会合で3年9カ月ぶりに利上げに転換、23年1月会合まで6会合連続で金利を引き上げたが、利上げ幅が計2.25ポイントに達したことを受け、これまでの利上げ効果を見るため、2月会合で22年7月以来7カ月ぶり金利を据え置いた。これで金利据え置きは7会合連続。

 中銀は会合後に発表した声明文で、前回7月会合時と同様、「政策金利を5.75%に維持することは23年のインフレ率を前年比2-4%上昇、また、24年には同1.5-3.5%上昇の物価目標のレンジ内に抑制するという金融政策スタンスと一致する」とし、引き続き、これまでの利上げが経済やインフレに及ぼす効果を見たい考え。

 また、中銀は前回会合時と同様、「金融政策の焦点は、輸入インフレを抑制し、世界的な金融市場の不確実性の影響を軽減するため、ルピア相場の安定を強めることにある」とし、ルピア相場への下押し圧力を緩和するため、金利を据え置いたとしている。中銀は声明文で、「米国など先進国で追加利上げが予想され、インドネシアを含む発展途上国での為替圧力が増大しており、こうしたリスクを軽減するための政策対応の強化が必要だ」としている。ペリー・ワルジヨ総裁も会見で、「ルピアを守ることが外部からの影響から国内経済とインフレ、経済成長を守る方法だ」と述べている。

 最近のルピア相場について、中銀は、「ルピア相場は中銀の相場安定化政策に沿って抑制されている」とした上で、今後の見通しについては前回会合時と同様、「今後、インドネシア経済の成長見通しと、低インフレ、国内金融資産の魅力的な利回り(による経常黒字と海外資本の流入に支えられ)、ルピアの上昇が続くと予想している」としている。

 インフレ見通しについては、中銀は「インフレ圧力は引き続き低下、物価目標の範囲内で一段と抑制されている」とした上で、「インフレは23年の残り期間は2-4%上昇、24年には1.5-3.5%上昇の物価目標の範囲で抑制されると予想している」としている。

 今後の金融政策について、中銀は前回会合時と同様、「景気回復の勢いを維持するため、ポリシーミックス(複数の経済政策手段の一体運営)を強化する」とし、これまで通り、ルピア安阻止のため、スポット市場での介入や、ルピアを決済に使う為替フォワード(先渡し)取引である「DNDF(ドメスティック・ノン・デリバラブル・フォワード)市場での介入を継続するとしている。また、新たに中銀が保有国債を裏付けとするルピア建ての証券(BIRS)を発行することにより、短期金融市場を強化、海外からのポートフォリオ投資の魅力を高めていくとしている。ワルジヨ総裁は、ルピア建てBI証券の裏付けとして利用できる保有国債は1000兆ルピア超で、9月15日から6カ月、9カ月、12カ月の償還期間で発行するとしている。

 また、今回の会合でも中銀は23年の成長率目標を4.5-5.3%増に据え置いた上で、景気を支援するため、「住宅や観光、グリーン(環境保護)ファイナンスなどに焦点を当てた融資の促進を目指した銀行の流動性強化措置の効果を高めるため、緩和的なマクロプルーデンス政策(金融システムの安定を目指した政策)を続ける」としている。

 中銀は前回の会合で一般の商業銀行やシャリア銀行(イスラム法に則って銀行業務が行われるイスラム系銀行)などを対象とした流動性強化政策(KLM)を決めている。これは10月1日から銀行が中銀に積み立てる預金準備率を引き下げることにより、47兆ルピアの流動性を創出、銀行融資の拡大につなげるもの。市場では中銀は利下げに消極的で、それよりも信用の増加を選択したと見ている。

 次回会合は9月20-21日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、アセアン50<2043.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

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