<新興国eye>カンボジア プノンペン環状3号線が開通

新興国

2023/8/25 8:57

 8月3日、カンボジアの首都プノンペンの環状3号線道路が完成し、記念式典が開催されました。式典には、フン・セン首相、スン・チャントル公共事業運輸大臣、中国大使の他、関係者多数が参加しました。

 環状3号線は、国道1号線の新プノンペン港付近からスタートして西に向かい、バサック川を越えて国道21号線と交差し、ワールドブリッジ経済特区の南を通り、国道2号線と交差、北西に向かって国道3号線と交差した後、北に向かい国道4号線を越えて、ロイヤルゴルフコースの前を通って向きを東に変え、国道5号線に連結し、プレックプノウ橋でトンレサップ川を渡り、ウィンウィンモニュメントの前を通過して国道6号線に至ります。延長約53キロメートル、片側2車線、コンクリート舗装の道路です。なお、新プノンペン港近辺からメコン河を渡る橋を建設し、対岸の「プノンペン~ベトナム高速道路」の起点と連結する計画もあります。

 このうち、今回中国が支援対象としたのは南側の1号線から4号線までの部分になります。総工費2億7300万ドルのうち、2億5900万ドルは中国政府の借款により賄われました。建設工事は中国の上海建工集団が請け負いました。工事は、2019年1月に着工し、2021年末の完成を予定していましたが、新型コロナの影響や土地取得の遅れ等もあり、工期が大幅に遅延していました。

 現在、渋滞対策の観点から、朝5時から夜9時までコンテナトラック等の大型車のプノンペン中心部への進入を禁止しています。環状3号線は、拡大を続けるプノンペンの外側を通っているため、プノンペン市内への流入量を削減してプノンペン市内の渋滞を抑制するとともに、主要国道とプノンペン新港を連結する観点からも重要な道路になるものと見られます。また、プノンペン都では、プノンペン市内の工場や倉庫を将来的に環状3号線外側に移転していくという意向を表明しています。

 中国や韓国によるカンボジアでの道路整備については、低品質の施行や、工期の遅れがみられるのが実情です。公共事業運輸省は、こうした事態を防ぐために厳しい検査や指導を行っています。見かけの工期の短さや価格の安さに惑わされることなく、日本が推進する「質の高いインフラ」に軸足を移していくことが期待されます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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