サニーサイドアップ・経営陣にインタビュー:コア事業強化から中・長期的な成長へ
2023/9/4 9:00
サニーサイドアップグループ(2180)は基幹事業のマーケティング&コミュニケーション事業、セールスアクティベーション事業が好調で、前6月期は好決算を発表した。PR、ブランディング、プロモーションなど、情報を伝える・広げることを得意とする同社は今後、コア事業をより強化するとともに、これまでに培った知見、ノウハウを生かし、中・長期的な成長戦略を進める構えだ。同社の現状と今後について次原悦子代表取締役社長と渡邊徳人代表取締役副社長に聞いた。
――前期の業績は連結売上高189億5600万円(前々期比17.1%増)、営業利益12億9600万円(同68.9%増)で、売上高、利益とも過去最高を更新しました。
渡邊代表取締役副社長「マーケティング&コミュニケーション事業でコスメ・ファッション、食品・飲料などのPR受注が増加し、セールスアクティベーション事業では人気キャラクターのIP(知的財産)を活用した大手コンビニ向けの販促企画が好調でした。フードマーケティング事業は国内の復調もあって業績改善が進み、新規事業の開発・創出を行うビジネスディベロップメント事業も黒字化しています。第4四半期(4~6月)にPR受注が増加していますが、事業環境としてはコロナが落ち着いて、消費も動いており、経済が回復に向かっていると言えます。オリンピックの前から大型複合施設やホテルの開業が相次いでいましたが、東京では2023年に入っても春に国内最大級の複合施設タワーが開業し、秋には大型都市開発が予定されています」
次原代表取締役社長「創業時からモノ、ヒト、コトに関するPRに携わってきましたが、当社が得意としてきた商業施設、ホテル、地域など、『場』にひもづくPRが好調です。大型商業施設のPR実績が次のオファーにつながり、デベロッパーをはじめとする、さまざまなステークホルダーとの連携から情報が集まるなど、好循環のスパイラルが生まれる状況となっています。また、円安などを背景に、日本進出を計画するグローバル企業からの依頼も急激に増加しています。昨年、私は国際PR協会の会長を務めましたが、海外PRエージェンシーとの連携を通じた引き合いや、これまでの実績を見てお声を掛けていただくことも多くなっています。当社の大きな特徴として、社員の女性比率の高さがあります。グローバル企業の中には、主に女性を対象とする商品やサービスのPRであれば当社にお願いしたいとご指名いただくケースもあります」
――今期も売上高210億円(前期比10.8%増)、営業利益15億6000万円(同20.3%増)と、順調な成長を予想しています。
次原代表取締役社長「今期から基幹事業であるマーケティング&コミュニケーション事業、セールスアクティベーション事業を『ブランドコミュニケーション』事業として再定義し、さらなる強化を図ります。そのため、グループの中核を担うサニーサイドアップを存続会社として、ワイズインテグレーション、スクランブルを吸収合併し、シナジー(相乗)効果を最大化しながら、クライアントとの長期的な関係構築を目指します。経営体制の強化を目的に、マーケティングのプロフェッショナルであるリュウ シーチャウを外部から招聘(しょうへい)しています。当社はこれまで得意領域を絞ることなく、どんな分野の案件も積極的に取り組み、多岐にわたるクライアントと仕事をしてきたことが強みとして蓄積されています。PRのご相談を通じ、情報がいち早く集まることで、先のトレンドが予測できるため、PRの受託だけでなく、マーケティング、コンサルティングなど、幅広い提案につなげています。今後はPR市場に加え、コンサルティング市場、さらに大きな広告市場は広義でメディア市場に変化していくととらえ、積極的に事業チャンスを狙いたいと考えています」
――中・長期的な事業展開についてはどう考えていますか。
次原代表取締役社長「この3年はコア事業が中心です。ただし、PRのアウトプットにはテクノロジーが欠かせない時代となりました。時代の変化をチャンスにすべく、XR(クロスリアリティー)事業を新たに立ち上げます。動画市場は急成長していますが、最先端の技術で動画制作を内製化し、提供サービスに厚みを増していく予定です。また、社会課題の解決に資するプロジェクトにも長年取り組んできたことから、サステナビリティの領域に関する事業を中・長期的な柱として育成したいと考えています。例えば海外では、フェムテックは身体ケアだけでなく、教育やキャリアサポート、メンタルケアなど、幅広くとらえられており、世界の有望な企業の日本進出の支援に携わりながら、一緒に価値を高めていく活動をしたいと考えています。『bills』のブランディングのように、当社には新しいサービス、ブランドを広く普及させる力があります。サステナビリティの領域でも、当社の知見・ノウハウを生かして長期視点で取り組みたいと考えています」
――御社はスタンダード市場への選択を申請しましたが、その背景を教えてください。
渡邊代表取締役副社長「8月にスタンダード市場への上場選択を申請しました。プライム市場の上場維持基準適合に向けて、各種施策を実施しておりましたが、経過措置終了までの時間が余りないことが経営判断に影響することがあってはならず、10年先を見据えた中・長期的な成長戦略を実現するためにも、事業成長に経営資源を集中すべきと判断しました。また、株主様や投資家の皆様に当社株式を安心して保有・売買していただくためにも早期に判断することが重要と考え、決算発表と同時に公表しました。ただ、市場区分にかかわらず中・長期的な企業価値向上に取り組むことは必要ですので、成長に向けて引き続き取り組んでまいります」
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