<新興国eye>インドネシア中銀、予想通り金利据え置き―8会合連続

新興国

2023/9/22 8:51

 インドネシア中央銀行(BI)は21日の理事会で、通貨ルピアの対ドル相場の変動(下落)圧力を緩和するため、主要政策金利の1週間物リバースレポ金利を5.75%の高水準に据え置くことを決めた。

 また、中銀は過剰流動性を吸収するための翌日物預金ファシリティー金利(FASBIレート)も5.00%、翌日物貸出ファシリティー金利も6.50%と、いずれも据え置いた。

 金利据え置きは市場の予想通りだった。市場では国内景気が堅調を維持、インフレが低下傾向にあるものの、FRB(米連邦準備制度理事会)が依然、金利を高止まりさせていることを受け、ルピア相場の下ブレリスクを緩和するため、中銀は高水準の金利を維持すると予想していた。金利は依然、19年以来4年ぶりの高水準となっている。

 中銀はインフレ加速を受け、22年8月会合で3年9カ月ぶりに利上げに転換、23年1月会合まで6会合連続で金利を引き上げたが、利上げ幅が計2.25ポイントに達したことを受け、これまでの累積的な利上げ効果を見るため、2月会合で22年7月以来7カ月ぶり金利を据え置いた。これで金利据え置きは8会合連続となる。

 中銀は会合後に発表した声明文で、前回8月会合時と同様、「政策金利を5.75%に維持することは23年のインフレ率を前年比2.0-4.0%上昇、また、24年には同1.5-3.5%上昇の物価目標のレンジ内に抑制するという金融政策スタンスと一致する」とし、引き続き、これまでの利上げが経済やインフレに及ぼす効果を見たい考えを示している。

 また、中銀は前回会合時とほぼ同様に、「世界的な金融市場の不確実性の影響が予想されるため、ルピア相場の安定を強めることに焦点を当てている」とし、ルピア相場への下振れリスクを緩和するため、金利を据え置いたとしている。

 この「世界的な金融市場の不確実性の影響」という文言については、中銀は声明文で、「先進国のインフレ率は依然高いため、先進国、特に米国の政策金利が高水準で維持されることにより、世界的な金融市場の不確実性が高まっている」と指摘、その上で、「インドネシアを含む新興市場国からの資本流出や為替相場の下落圧力が増大しており、こうしたリスクを軽減するための政策対応の強化が必要だ」としている。ペリー・ワルジヨ総裁は前回会合時の会見で、「ルピアを守ることが外部からの影響から国内経済とインフレ、経済成長を守る方法だ」と述べている。

 インフレ見通しについては、中銀は「8月のCPI(消費者物価指数)は前年比3.27%上昇と、引き続き物価目標の範囲内にとどまっている」とした上で、前回会合時と同様、「インフレは23年の残り期間は2.0-4.0%上昇、24年には1.5-3.5%上昇の物価目標の範囲で抑制されると予想している」としている。

 今後の金融政策について、中銀は前回会合時と同様、「持続可能な経済成長を支援するため、ポリシーミックス(複数の経済政策手段の一体運営)を強化する」とし、これまで通り、ルピア安阻止のため、スポット市場での介入や、ルピアを決済に使う為替フォワード(先渡し)取引である「DNDF(ドメスティック・ノン・デリバラブル・フォワード)市場での介入を継続するとしている。

 また、新たに中銀が保有国債を裏付けとするルピア建ての証券(BIRS)を発行することにより、短期金融市場を強化、海外からのポートフォリオ投資の魅力を高めていくとしている。中銀は前回会合時、ルピア建てBI証券の裏付けとして利用できる保有国債は1000兆ルピア超で、9月15日から6カ月、9カ月、12カ月の償還期間で発行する方針を示している。

 また、今回の会合でも中銀は23年の成長率目標を4.5-5.3%増に据え置いた。その上で、景気を支援するため、「特に需要面からの経済成長を促進するため、政府の財政刺激策とマクロプルーデンス政策(金融システムの安定を目指した政策)の相乗効果を強化し続けている」としている。

 中銀は7月会合で一般の商業銀行やシャリア銀行(イスラム法に則って銀行業務が行われるイスラム系銀行)などを対象とした流動性強化政策(KLM)を決めているが、中銀は今回の会合で、予定通り、10月1日から銀行が中銀に積み立てる預金準備率を引き下げることを明らかにした。これにより、47兆ルピアの流動性を創出、銀行融資の拡大につなげる。市場では中銀は利下げに消極的で、それよりも信用の増加を選択したと見ている。

 次回会合は10月18-19日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、アセアン50<2043.T>

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