永濱利廣のエコノミックウォッチャー(42)=法人企業景気予測調査からみる企業業績

コラム

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2023/10/1 9:00

 9月に公表された7~9月期法人企業景気予測調査は、今期の業種ごとの企業業績を占う先行指標として注目される。

不動産など売上増額へ

 まず、同調査における売上高と経常利益計画の今年度の見通しは、売上高が全産業と非製造業で従来比横ばい、製造業で下方修正となっている。経常利益も、非製造業の上方修正により全産業ベースでも引き上げられたが、製造業はやはり下方修正となっている。

 もろもろのコスト増により、前年比で減益となる方向に変化はない。10月下旬以降に本格化する企業の四半期決算発表にも、こうした情勢が反映されそうだ。

 一方、業種別では傾向が分かれてくる。

 売上高については、製造業では「木材・木製品」「石油・石炭製品」「鉄鋼」「非鉄金属」以外、非製造業では「農林水産」「鉱・採石・砂利採取」以外の業種で増収計画が示されている。前年比の上方修正率が高い業種は「不動産」「職業紹介・労働者派遣」「宿泊・飲食サービス」「鉱・採石・砂利採取」「リース」だ。

 「不動産」については、引き続き都心の高額物件の人気が高いことや、オフィス需要が改善していること、インバウンド(訪日外国人観光客)の回復などに伴う商業用不動産の業況改善が背景にあるとみられる。また「職業紹介・労働者派遣」の上方修正については、30年ぶりの賃上げや最低賃金引き上げが影響した可能性がある。

 一方、「宿泊・飲食サービス」については、コロナ後のリオープン(経済活動再開)やインバウンドの復活により値上げが進んでいる。「鉱、採石、砂利採掘」は鉄鉱石など一部の資源価格が比較的堅調に推移していること、「リース」は昨年度来続く旺盛な企業の設備投資需要がプラス材料になっているようだ。

電気・ガスの経常益大幅上ブレ

 続いて、経常利益計画から増益率の上方修正が期待される業種を見通してみよう。

 同調査で上方修正が目立つ業種は「電気・ガス・水道」「窯業・土石」「食料品」「医療・教育」「繊維」などであり、いずれも修正率が大きい。特に3ケタの修正となった「電気・ガス・水道」は、電気料金の値上げや原発再稼働による燃料費削減効果が追い風になっていると推察される。

 また「窯業・土石」については、売上高計画が小幅上方修正にとどまっていることから、原材料価格の低下が上方修正に寄与していることが示唆される。

 一方、「食料品」や「繊維」は、売上高も「リース」に次ぐ上方修正になっているため、値上げ効果が奏功していると考えられる。「医療・教育」は、医療・福祉・介護・保育分野で入居率が底打ちして回復したことが寄与しているためと思われる。

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【プロフィル】永濱利廣…第一生命経済研究所・首席エコノミスト/鋭い経済分析を分かりやすく解説することで知られる。主な著書に「経済指標はこう読む」(平凡社新書)、「日本経済の本当の見方・考え方」(PHP研究所)、「中学生でもわかる経済学」(KKベストセラーズ)、「図解90分でわかる!日本で一番やさしい『財政危機』超入門」(東洋経済新報社)など。

(写真:123RF)

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