<新興国eye>インド準備銀行、金利を据え置き―5委員が引き締めスタンスを支持

新興国

2023/10/10 9:18

 インド準備銀行(中銀)は先週末(6日)の金融政策決定会合で、インフレ上昇を抑制し、景気を支援するため、流動性調節ファシリティ(LAF)の主要政策金利であるレポ金利(中銀の市中銀行への翌日物貸出金利)を6.50%に据え置くことを全員一致で決めた。市場の予想通りだった。

 また、中銀はレポ金利の据え置きに伴い、金融システムから余剰流動性を吸収するため、金利の上下幅(コリドー)についてもLAFのリバースレポ金利(市中銀行の中銀への預金金利)を6.25%、市中銀行が資金ひっ迫時に中銀から政府債を担保に資金を借りることができる流動性供給スキーム「MSF(マージナル・スタンディング・ファシリティー)」と公定歩合をそれぞれ6.75%に据え置いた。

 中銀はインフレの急加速を受け、22年5月4日の臨時会合で0.40ポイントの緊急利上げに踏み切り、今年2月会合まで6合連続で利上げを実施、利上げ幅は計2.50ポイントに達した。4月会合から据え置きに転じており、これで据え置きは4会合連続。6.50%の金利水準は18年以来4年ぶりの金融引き締め水準となっている。

 また、中銀は今後の金融政策のスタンスについて、6委員中、大半の5委員(前回会合時も5人)が「引き続き、成長を支援しながら、インフレが徐々に物価目標に収束するよう金融緩和の撤回(金融引き締め)に引き続き注力する」とし、利上げサイクルの終了宣言は時期尚早とし、一時休止の判断を示した。ただ、ジャヤント・R・ヴァルマ委員だけが今回の会合でも態度保留とした。

 金利据え置きを4会合連続で決めたことについて、中銀は声明文で、前回会合時と同様、「これらの決定はインフレ率を中期の物価目標である2-6%上昇(中央値4%上昇)の範囲内に戻し、経済成長を支援するという中銀の目的と合致する」としたが、「世界的な食料とエネルギーの価格急騰や世界金融市場の不安定さを考慮し、(経済やインフレの見通しに対し)厳戒態勢を続ける」、また、「インフレ率(全体指数)は許容範囲を超えており、物価目標との一致が妨げられつつある。従って、金融政策は積極的なインフレ抑制を維持する必要がある」とし、インフレリスクは依然大きいとし、金利を高水準のまま据え置いたとしている。

 中銀は今後の金融政策について、「これまでの累積的な2.50ポイントの利上げが経済に波及する中で、金利据え置きを決めたが、必要に応じ、政策対応を行う用意がある」とし、追加利上げの可能性を示唆している。これは今回の金利据え置きは依然、「タカ派的な一時休止」であることを意味する。シャクティカンタ・ダス総裁も声明文で、「今の時代に必要なのは、警戒を怠らず、自己満足の余地を与えないことだ」、また、「高インフレは依然として安定と持続可能な成長に対する大きなリスク」と指摘している。市場では中銀はインフレリスクを警戒、政策金利を長期にわたり、据え置く可能性が高いと見ている。

 また、総裁はインフレ抑制のため、前回の8月会合に続いて、金融システムから過剰流動性を吸収することを検討する必要性を強調した。前回の会合で、中銀は一時的措置として、金融システムから過剰流動性を吸収するため、市中銀行に対し、12日から2週間、CRR(支払準備金の比率)を4.50%から10.00%に引き上げるよう指導、これにより、1兆1000億ルピーを削減している。

 足元のインフレ状況は、8月が前年比6.8%上昇と、7月の同7.4%上昇を下回った。今後のインフレ見通しについては、「野菜価格の調整(下落)と最近のLPG(液化石油ガス)価格の下落を背景に、短期的なインフレ見通しは改善する」と見ている。その上で、中期見通しについては、23年度を5.4%上昇(前回会合時も5.4%上昇)と予想。第2四半期(7-9月期)は6.4%上昇(同6.2%上昇)、第3四半期(10-12月期)は5.6%上昇(同5.7%上昇)、第4四半期(24年1-3月期)は5.2%上昇(同5.2%上昇)と予想。また、24年度第1四半期(4-6月)を同5.2%上昇と予想している。

 次回の金融政策決定会合は12月6-8日に開かれる予定。

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提供:ウエルスアドバイザー社

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