<新興国eye>インドネシア中銀、予想に反し0.25ポイント追加利上げー中東紛争に伴うルピア防衛で

新興国

2023/10/20 8:47

 インドネシア中央銀行(BI)は19日の理事会で、中東紛争によるインフレ上昇圧力や通貨ルピアの下落圧力を緩和するため、主要政策金利の1週間物リバースレポ金利を0.25ポイント引き上げ、6.00%とすることを決めた。

 また、中銀は過剰流動性を吸収するための翌日物預金ファシリティー金利(FASBIレート)も5.25%、翌日物貸出ファシリティー金利も6.75%と、いずれも同率引き上げた。

 市場の大方の予想は金利据え置きだったため、サプライズとなった。ただ、一部では市場介入を優先したルピア相場の安定化は外貨準備の減少を招くため、0.25ポイントの追加利上げを予想していた。

 中銀はインフレ加速を受け、22年8月会合で3年9カ月ぶりに利上げに転換、23年1月会合まで6会合連続で金利を引き上げたが、利上げ幅が計2.25ポイントに達したことを受け、これまでの累積的な利上げ効果を見るため、2月会合で22年7月以来7カ月ぶり金利を据え置き、前回9月会合まで9会合連続で据え置いた。追加利上げは1月以来となる。

 中銀は会合後に発表した声明文で、追加利上げを決めたことについて、「世界的な不確実性の増大による影響からルピア相場を安定させる政策を強化するため、また、輸入インフレへの影響を緩和するため、先制的かつ前向きな措置だ」とした上で、「(追加利上げは)インフレ率を23年は前年比2.0-4.0%上昇、また、24年は同1.5-3.5%上昇の物価目標の範囲内で引き続き抑制されるようにするためだ」としている。市場では今回の追加利上げはイスラム組織ハマスとイスラエルの戦争勃発(10月7日)により、原油価格が高騰、インフレ上昇懸念が再燃したことを受けた措置としている。

 ただ、中銀は中東紛争前から、「世界的な金融市場の不確実性の影響」という文言を使っており、今回の会合後の声明文でも、「インフレを抑制するため、先進国の政策金利、特に米国の金利が今後、長期にわたり、高水準で維持されることが予想されることにより、新興市場国からの資本流出や為替相場の下落圧力が増大している」とした上で、「地政学的な緊張の高まり(中東紛争)により、世界的な経済・金融の不確実性が高まっている。インドネシアを含む新興国経済の先行きへの悪影響を軽減するため、政策対応を強化することが必要だ」としている。

 今後の金融政策について、中銀は前回9月会合時と同様、「持続可能な経済成長を支援するため、ポリシーミックス(複数の経済政策手段の一体運営)を強化する」とし、これまで通り、ルピア安阻止のため、スポット市場での介入や、ルピアを決済に使う為替フォワード(先渡し)取引である「DNDF(ドメスティック・ノン・デリバラブル・フォワード)市場での介入を継続するとしている。

 また、中銀が保有国債を裏付けとするルピア建ての証券(BIRS)に加え、新たに11月17日から外貨建て証券(BIFCS)を発行することにより、短期金融市場を強化、海外からのポートフォリオ投資の魅力を高めていくとしている。これは外資の流入を高めることでルピア防衛を強化するのが狙い。中銀は8月会合で、ルピア建てBI証券の裏付けとして利用できる保有国債は1000兆ルピア超とし、9月15日から6カ月、9カ月、12カ月の償還期間で発行する方針を示している。

 また、今回の会合でも中銀は23年の成長率目標を4.5-5.3%増に据え置いた。その上で、景気を支援するため、「特に需要面からの経済成長を促進するため、政府の財政刺激策とマクロプルーデンス政策(金融システムの安定を目指した政策)の相乗効果を強化し続けている」としている。

 中銀は7月会合で一般の商業銀行やシャリア銀行(イスラム法に則って銀行業務が行われるイスラム系銀行)などを対象とした流動性強化政策(KLM)を決め、10月1日から銀行が中銀に積み立てる預金準備率を引き下げたが、今回の会合でもこのKLMの有効性を再確認した。これにより、47兆ルピアの流動性を創出、銀行融資の拡大につながるため、市場では中銀は利下げに代わって信用の増加を選択したと見ている。

 市場では今後もルピア安が進めば、次回会合でも追加利上げの可能性が高まると見ている。次回会合は11月22-23日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、アセアン50<2043.T>

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