エージーピー、物流倉庫支援を本格化――加速する空港外展開=出口執行役員に聞く

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2023/10/31 16:07

 エージーピー(9377)は主力の空港向けビジネス(注)で蓄積した技術を、空港外にも展開する多角化戦略を進めている。中でも、EC(=Eコマース、電子商取引)などの物流倉庫をワンストップで支援するサービスが本格化しつつあり、将来的な中核事業の候補として存在感を強めてきた。同事業を率いる新規事業推進部・執行役員の出口英雄氏=写真=に話を聞いた。

注・同社は、駐機中の航空機に「GPU(地上動力設備)」と呼ばれる装置で電力や冷暖房を送り込む「動力供給」のサービスを軸に、空港内特殊機器の運用保守や施設の保守、商品販売なども含めた空港での事業を主力としている。

搬送システム販売開始へ、増収ペースに勢い

 ――倉庫の運営を支援する「物流保守サービス」の売上高は、2022年3月期の6.7億円から前期は7.3億円に拡大し、今期も7.5億円へと伸長する見通しだ。

 出口執行役員(以下略)「大手EC事業者向けを中心にサービスの需要が堅調だ。空港で荷物を搬送するBHS(手荷物取扱施設)で50年以上にわたり培ったノウハウを、他の領域でも生かす取り組みは順調に進ちょくしている」

 ――ただ、足元の増収ペースに対して、26年3月期の同事業の売上高目標の18億円(連結売上高の目標は150億円)は高いハードルにも見える。

 「従来の事業の中身は主に技術者の提供だった。しかし、足元では倉庫の省人化をトータルでコンサルティングする段階に入りつつあり、近く搬送システムの販売を始める。顧客のニーズに応じてマテハン機器を組み合わせ、工事や運用・保守までをワンストップで展開するビジネスへと形を変えていく方向だ」

 「機器に関しても、国内外のメーカーとの直接取引を含めてラインアップを拡充している。省人化につながるAGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)、ピッキングロボットなどを組み合わせ、トータルコーディネートをしていくことで、増収ペースを加速していく」

「24年問題」商機、長期展望は売上30億円

 ――来年4月から時間外労働の上限規制が強化される。

 「いわゆる『物流24年問題』はドライバーだけではなく、倉庫においても大きな課題だ。そのため省人化のニーズは強く、エージーピーは搬送システムを使った最適解を提案していく。また、同じ問題は建設業界も抱えており、既存の技術者派遣のサービスを横展開できる可能性もある」

 ――現中計期間よりも長い視点では、物流保守サービス事業の規模感をどの程度までイメージできるだろうか。

 「市場は今後も伸びることが予想され、需要を取り込んでいく構えだ。搬送システムの提供は、大手マテハンメーカーとは競合しにくい中小規模の倉庫を開拓していく。協力会社などのアウトソーシング先も広げるほか、DX(デジタルトランスフォーメーション)も進めて対応力を高める。長期での売上の目安としては、30億円は必要だと考えている」

 「物流倉庫での事業展開は空港を起源としているが、空港外での新たな知見やノウハウを、今度は空港内に戻して活用することによる相乗効果も見込まれる。EC大手の最新倉庫で得た経験や、省人化対応などに関するデジタル技術は、今後予定されている各空港の大規模リニューアルの際にわれわれの強みになるだろう」

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