<新興国eye>ハンガリー中銀、政策金利を0.75ポイント引き下げ―2会合連続

新興国

2023/11/22 8:43

 ハンガリー中央銀行は21日の金融理事会で、主要政策金利であるベース金利(準備預金への付利金利)を0.75ポイント引き下げ、11.5%とすることを決めた。市場の大方の予想通りだった。

 また、中銀は他の主要政策金利についてもベース金利の上下幅(コリドー)の下限を示す翌日物預金金利を10.50%、また、上限を示す翌日物有担保貸出金利も12.50%にそれぞれ同率引き下げた。新金利は22日から適用される。

 中銀はウクライナ戦争の勃発(22年2月24日)でインフレが加速したため、22年9月会合まで17会合連続で利上げを実施、利上げ幅も計12.40ポイントに達した。金利水準が99年12月(14.50%)以来22年9カ月ぶりの高水準となったため、22年10月会合から据え置きに転換、9月会合まで12会合連続で据え置いた。しかし、最近のインフレの鎮静化を受け、前回10月会合で、コロナ禍の20年7月以来、3年3カ月ぶりに利下げに転換。今回で2会合連続となり、利下げ幅も0.75ポイントのペースを維持している。

 中銀は今回のベース金利の引き下げについて、「ディスインフレ(物価上昇率の低下)と金融市場の安定により、金利引き下げが可能になった」とし、前回会合時と同様、金融政策の正常化に向けた措置であることを改めて強調。その上で、今後の金融政策について、「外部リスク(世界的なディスインフレと市場の安定性を巡るリスク)を考慮し、慎重なアプローチをとる必要がある。中銀は最新のマクロ経済のデータやインフレ見通し、リスクの見通しを注視しており、今後数カ月以内に金融政策のさらなる変更を決める」とし、これらのリスクが改善すれば、追加利下げの余地があることを示唆した。

 利下げペースをめぐっては、政府は景気刺激のため、中銀に対し、より大幅な利下げを求めているが、中銀のバルナバス・ビラグ副総裁は先週、「現在の環境は11月に0.75ポイントのペースで利下げを継続することを支持している」とした上で、「インフレの鈍化が続き、世界的なリスク要因が許せば、今後数カ月間、このペースで金融緩和を継続する」と述べ、0.75ポイント程度の利下げペースの継続が望ましいとの考えを示している。

 中銀が急速な利下げに慎重な姿勢を示している背景には、中東紛争などの地政学的リスクが高まっていることや、急速な利下げによる通貨フォリントの下落が金融市場を不安定化させることへの懸念がある。中銀は会合後に発表した声明文で、「高止まりするインフレ環境と現在進行中のロシア・ウクライナ戦争は世界、特に欧州の経済活動の見通しに重大な不確実性をもたらしている。その一方で、中東のガザ情勢の激化は地政学的緊張の増大に寄与している」と、強い懸念を示している。

 市場では中銀は利下げペースを現状で維持し、ベース金利は次回12月会合で0.75ポイント引き下げられ、10.75%になると予想している。

 インフレについては、10月の全体指数が前年比9.9%上昇と、1年半ぶりに10%上昇を割り込み、9月の同12.2%上昇や8月の同16.4%上昇から急低下しており、中銀はインフレ見通しについて、前回会合時と同様、「今後数カ月間、全体指数とコア指数は低下し続ける」とした上で、前回会合時と同様、25年にはインフレ率は物価目標の許容範囲内に収束すると見ている。今回の会合でも中銀は23年全体のインフレ率を17.6-18.1%上昇、24年は4.0-6.0%上昇、25年は2.5-3.5%上昇との予測を据え置いた。

 次回の金融政策決定会合は12月19日に開かれる予定。

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提供:ウエルスアドバイザー社

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