<新興国eye>タイ中銀、予想通り金利据え置き―今後も当分、据え置きを示唆

新興国

2023/11/30 8:56

 タイ中央銀行は29日の金融政策委員会で、インフレの鎮静化を受け、政策金利である翌日物レポ金利を2.50%に据え置くことを全員一致で決めた。市場の予想通りだった。

 市場では経済成長が依然、低迷しているものの、過去の累積的な利上げにより、直近のインフレ率が中銀の物価目標(前年比1-3%上昇)を下回ったため、金利を据え置くと予想していた。

 中銀は20年6月から22年6月まで16会合連続で政策金利を据え置いたが、通貨バーツ安とインフレ上ブレリスクが強まったとして、22年8月会合で18年12月以来、3年8カ月ぶりに利上げ(0.25ポイント)に転換した。前回9月会合まで8会合連続で利上げを実施。利上げ幅は計2.00ポイントに達した。2.50%は13年以来10年ぶりの高水準。据え置きは17カ月ぶり。

 市場ではスレッタ・タビシン首相が景気刺激の利下げ転換を急ぐよう中銀に圧力をかけているが、中銀は景気刺激などによるインフレ再加速に警戒感を緩めていない。このため、中銀は24年末まで金利を据え置き、将来の景気悪化に備え、金融政策の変更(利下げ)余地を残したいと見ている。

 中銀は会合後に発表した声明文で、景気の見通しについて、「タイ経済は財輸出と生産の一部に減速が見られるものの、全体的に回復が続いている」とした上で、「内需や観光部門、財輸出の回復に支えられ、24年と25年はバランスのとれた成長になる」とし、楽観的な見方を示している。具体的には23年は2.4%増(前回予想は2.8%増)、24年は3.2%増(同4.4%増)を予想、いずれも前回予想から下方修正した。

 他方、インフレ見通しについては、中銀は、「来年のインフレ率は景気回復とエルニーニョ現象による悪影響(食品価格の上昇)を受けて上昇する」とし、将来のインフレ圧力の上昇に警戒感を示した。また、中銀は中東紛争によって引き起こされる世界的なエネルギー価格の上昇の可能性も警戒している。

 中銀の23年のインフレ率(全体指数)見通しは1.3%上昇(前回予想は1.6%上昇)、24年は2.0%上昇(同2.6%上昇)。また、コアインフレ率は23年が1.3%上昇(同1.4%上昇)、24年は1.2%上昇(同2.0%上昇)と、全体指数とコア指数のいずれも前回予想から引き下げ、「インフレイ率は物価目標の範囲内に収まる」と予想している。

 その上で、中銀は、「生産がその潜在的生産能力に向かって回復していることから、現在の政策金利がインフレを物価目標の範囲内に持続的に維持し、長期的な金融の安定を促進するのに役立つ」とし、「不確実な経済見通しを考慮すると、政策余地(将来の利下げ余地)を残す必要がある」と指摘、今後の金融政策の調整余地を残すため、金利据え置きを決めたとしている。

 また、今後の金融政策について、中銀は、「現在の政策金利(水準)は長期の持続的な経済成長を支えるのに適切であると判断する」とした上で、「今後の金融政策を検討するにあたり、景気とインフレの見通し、それらの見通しのリスクを考慮する」とし、高水準となっている現在の金利の据え置きの継続の可能性を示唆。中銀のピティ・ディシャタット総裁補は会合後の会見で、「金利はしばらく、現在の水準にとどまる」との見通しを示している。

 次回会合は24年2月7日に開催される予定。

<関連銘柄>

 タイSET<1559.T>、アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、

 上場MSエマ<1681.T>、アセアン50<2043.T>

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