エージーピー、タイで空港電力最適化「EMS」の研究開発へ

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2023/12/8 9:00

 駐機中の航空機に電力や冷暖房を送り込む「動力供給」が主力のエージーピー(9377)は、空港の電力使用量を最適化する統合エネルギーマネジメントシステム(EMS)を研究開発する。AI(人工知能)などのDX(デジタルトランスフォーメーション)を駆使し、エネルギー問題の解決に貢献していく構えだ。

(写真:123RF)

タマサート大と共同研究、AIなどDX駆使

 同社はGPU(地上動力設備)と呼ばれる装置を用い、航空機に電力などを供給する事業で日本国内の空港をほぼ独占している。一方、海外にも目を向け、タイでは現地法人(AGPタイランド)を通じて独自の空港技術である「埋設型GPU」の展開を視野に入れている。

 航空業界でも脱炭素が最大のテーマとなる中で、このほど同国のタマサート大学とEMSの共同研究開発を目指すことで合意した。同大はAI分野に力を入れており、独立行政法人・産業技術総合研究所ともAIを含めたコンピュータサイエンスにおける研究協力関係にある。

 EMSにより、空港の滑走路やエプロンを指すエアサイドと、ターミナルサイドのそれぞれについて、電力需給を予測し最適な電力の配分を行う。エージーピーが日本で実証試験を通じて得てきたノウハウや技術に、タマサート大が得意とするAIなどのITを融合。運航情報や天候などのデータを基に、精度の高い電力の需給予測モデルの確立を目指す。

キックオフ会議を開催

 11月には、空港EMSにおける合意締結に伴い、エージーピーの大貫哲也社長らが参加するキックオフミーティングを同大で開いた。大貫社長が同社の紹介を行い、AGPタイランドの辻佳子マネージングディレクターが「空港に特化したEMSの概略」を説明した。

 

(会議に参加する大貫社長=右=とタマサート大のケシニーウィトゥーンチャート学長)

 昨今、日本に限らず世界で空港のカーボンニュートラル化へ向けた積極的な取り組みが推し進められており、タイの空港においても、二酸化炭素(CO2)排出量削減、グリーンエアポート化への取り組みなどが重要課題になっている。

 世界的に進むグリーンエアポート化の取り組みだが、空港内車両をEV(電気自動車)に置き換えることによる新たな問題も生じる。それが、エネルギー総量の増加や、発電コストの高騰だ。

 エージーピーは、「これまで取り組んできた『環境』と『電気』に加え、『DX』を掛け合わせた、EMSを開発することで、空港が抱える課題の解決に貢献していく」(辻氏)構え。滑走路の電灯やエプロンの照明、ターミナルのレストランやオフィスなど、空港で試乗される電力の配分を最適にコントロールできるシステムの構築を目指す。

 航空産業は世界のCO2排出量の約2%を占め、カーボンニュートラルへの投資が求められている。IATA(国際航空運送協会)では、加盟する航空会社に、2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロの目標達成へ受けた協力を呼び掛けている。空港での電力使用量を最適化するEMSは、CO2削減に欠かせないシステムとして、一段と引き合いが強まる見通しだ。

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