英中銀、6対3で金利を据え置き―3委員は0.25ポイント利上げを再度主張

経済

2023/12/15 10:57

<チェック・ポイント>

●ベイリー総裁、「インフレとの戦いの道のりはまだまだ遠い」

●ベイリー総裁、市場の24年早期利下げ期待を「時期尚早」と否定

●BOE、10-12月期とそれ以降数四半期の成長率を「横ばい」と予想

 BOE(イングランド銀行、英中銀)は14日、金融政策委員会(MPC)の結果を発表し、政策金利を5.25%に据え置くことを9委員中、6対3の賛成多数で決めたことを明らかにした。据え置きは市場の予想通りだった。

 金利据え置きは前回11月会合に続き、3会合連続。BOEの利上げサイクルは21年12月から今年8月までの14会合連続で止まったが、現行の5.25%の金利水準は依然、08年2月以来15年半ぶりの高水準となっている。

 BOEは声明文で、金利据え置きを決めた理由について、英国経済の景気後退懸念が高まってることを指摘している。BOEは、「7-9月期GDP伸び率が前期比横ばいとなったあと、10月のGDP伸び率は前期比0.3%減となった。10-12月期とそれ以降の数四半期の経済成長率はほぼ横ばいになることが予想される」とし、景気後退懸念を強めている。最新のBOEの11月経済予測では7-9月期GDP伸び率は前期比0.1%増を予想していたが、横ばいに下方修正された。

 また、BOEは金利を据え置いた要因として、インフレ上昇リスクが続いていることを挙げている。声明文で、「最も可能性が高い予測はインフレ率が25年末までに物価目標の2%上昇に戻るということだが、このインフレ見通しに対するリスクは上振れになっている」とし、物価目標の達成が25年末になるとの判断を据え置いている。

 BOEはインフレ上ブレリスクとして、「原油と天然ガスの先物価格は下落しているものの、中東情勢を考慮するとインフレの上ブレリスクは依然として存在する」とし、イスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘激化による地政学的リスクを挙げている。

 また、BOEは政府の23年秋の予算編成による景気刺激効果について、「今後数年間、GDP伸び率を約0.25%押し上げると推定されるが、インフレ圧力への影響は軽微」と見ている。その上で、「インフレ率は年明けごろも現在の水準(10月時点で前年比4.6%上昇)近くで推移すると予想される」とし、物価目標を2倍超上回る状況が続き、「インフレ指標は依然、高止まりする」と、懸念を示している。

 BOEの最新の11月経済予測では24年7-9月期まで金利が据え置かれ、26年末までに4.25%に低下すると予想している。しかし、金融市場では24年5月から利下げに転換、24年末までに計4回の利下げにより、4.25%に低下すると予想、積極的な利下げ期待が高まっており、BOEとの温度差が際立っているのが実情。

 ベイリー総裁も会見で、インフレとの戦いについて、「まだまだ道のりは遠い」とし、時間がかかるとの見通しを示した。また、景気支援のため、早期の利下げ転換の必要性についても最近のインフレ低下の進捗にもかかわらず、「利下げを検討し始めるのは時期尚早だ。我々はさらなるインフレ低下を見る必要がある」また、「今の政策金利はピークに達したと保証することはできない」と述べ、市場との温度差は縮まらなかった。このタカ派発言を受け、ポンド相場は対ドルで急騰した。

 だが、市場ではBOEが今回の声明文で指摘したように、過去の累積的な金融引き締めの効果により、労働市場のひっ迫感が緩和し、インフレが低下していること、さらには、景気後退懸念が強まっているため、政策金利はすでにピークに達したと見ている。今後、早期利下げ転換は必要で、BOEがタカ派スタンスを続ける根拠はないと見ており、今回の据え置き決定後も早ければ24年5月、または6-8月の利下げ転換の見方を変えていない。利下げ幅も24年末までに計3回(0.75ポイント)、さらに25年半ばまでに計3回(0.75ポイント)の利下げを想定している。

 次回の会合は24年2月1日に開かれる予定。

提供:ウエルスアドバイザー社

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