<新興国eye>ロシア中銀、1ポイント再利上げ―利上げサイクル終了の可能性
2023/12/18 9:21
ロシア中央銀行は先週末(15日)の金融政策理事会で、インフレ上昇圧力を抑制するため、主要政策金利である資金供給のための1週間物入札レポ金利と資金吸収のための1週間物入札預金金利を1.00ポイント引き上げ、16.00%とすることを決めた。市場の予想通りだった。
中銀は通貨ルーブル安とそれに伴うインフレ再加速を抑制するため、7月会合で、ウクライナ戦争開始(22年2月24日)以来、1年5カ月ぶりに利上げ(1.00ポイント)に踏み切っている。これで利上げは5会合連続となり、利上げ幅も8.50ポイントに達した。16.00%の金利は22年4月以来、1年8カ月ぶりの高水準。
エリビラ・ナビウリナ総裁は会合後の会見で、今回の決定について、「1ポイントの利上げか、または、金利据え置きの二者択一だった」と指摘した上で、「我々は利上げサイクルの終了に近づいている」「インフレ上昇率の鈍化とインフレ期待の低下に向けた着実な傾向が見られるまでは必要な限り、金利は高止まりする」と述べた。これを受け、市場では金利水準はピークに達した可能性があり、今後はこの高水準の金利がいつまで維持されるかが焦点になったと見ている。
しかし、その一方で、総裁は、「すべては今後の(インフレの)状況次第だ」とも述べたため、一部では次回会合でさらに1ポイントの追加利上げを予想する向きもある。
中銀は会合後に発表した声明文で、追加利上げを決めたことについて、「現在のインフレ圧力は依然として強く、23年のインフレ率は7.0-7.5%上昇のレンジの上限に近づく」とし、インフレ圧力を抑制するため、利上げを決めたとしている。その上で、「インフレ率が24年に物価目標(4.0%上昇)に収束し、その後、4.0%上昇近辺で安定的に持続することは金融引き締め状況が長期間維持されることを前提としている」とし、利下げ転換はかなり先になる見通しを示した。
中銀の最新の経済予測では24年にインフレ率が4.0-4.5%上昇に低下、その後は4.0%上昇近くで安定すると予想している。
また、中銀は今後の金融政策について、前回会合時と同様、「国内外の状況や財政、金融市場の反応によってもたらされるインフレリスク、また、物価目標や経済の構造転換の進捗状況との関連で実際にインフレ率と今後のインフレ動向を考慮し、主要金利についてさらなる決定を下す」とも述べ、(予断を持たず)オープンな姿勢を強調している。
足元のインフレリスクは、11月のインフレ率(全体指数)が前年比7.5%上昇と、9月の同6.0%上昇から加速したが、12月11日時点でのインフレ率は前年比7.1%上昇に鈍化している。ただ、四半期ベースでみると、7-9月期のインフレ率(全体指数)は年率で平均12.2%上昇(4-6月期は5.1%上昇)、他方、コアインフレ率は9.7%上昇(4-6月期は5.7%上昇)と、伸びが加速している。中銀は、「ここ数カ月間、持続的なインフレ圧力が高まっている。これは、内需が財やサービスの生産拡大能力を大幅に上回っているため」としている。
また、景気見通しについては、中銀は23年を3.0%超増と予想、前回予測(2.2-2.7%増)を上方修正した。中銀は、「ロシア経済の見通しは上振れ」とした上で、「高水準の公的需要とともに、民間需要の拡大が内需の着実な拡大を支えている。消費拡大は実質賃金と融資の上昇によって促進され、財政刺激策などによる企業利益の大幅な増加と景況感の好調が投資需要を支えている」としている。
中銀は今回の会合でもインフレリスクについて、「供給の制約は労働市場の状況にも関連しており、経済は特に製造業で深刻な人手不足に苦しんでいる。失業率は歴史的な低水準にある」とし、その上で、「中期的にインフレ上昇リスクは依然として大きい」とし、需要の増大に供給が追いつかず、インフレを加速させると警告している。ロシアは現在、ウクライナ戦争の拡大に伴う30万人の兵士動員や国外脱出の増加により、労働者不足に陥っている。
さらに、中銀は、「財政赤字がさらに拡大すれば、インフレ上昇リスクが再び高まり、24年にインフレ率を物価目標に戻し、その後も4.0%上昇近くを維持するには金融引き締め政策が必要となる可能性がある」とし、再利上げの可能性を否定していない。
次回の定例会合は24年2月16日に開かれる予定。
<関連銘柄>
RTS連動<1324.T>、WTI原油<1671.T>、ガス<1689.T>、
提供:ウエルスアドバイザー社
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