永濱利廣のエコノミックウォッチャー(48)=景気予測調査から占う24年度業績見通し

コラム

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2024/4/1 12:30

 

 3月に公表された2024年1~3月期法人企業景気予測調査は、今年2月下旬にかけて資本金1000万円以上の法人企業に対して行った景気予測調査で、新年度(24年度)の企業業績計画を業種別に予想するための先行指標として注目される。

「生産用機械」は生成AI追い風に増収へ

 まず売上高を見ると、24年度は4年連続の増収計画となっている。一方、経常利益は全体で23年度は3.3%の増益計画だが、コスト負担増などにより24年度は1.7%の減益に転じる見通しになっている。このことから、4月下旬からの決算発表では、多くの業種で24年度減益計画が出てくることが予想される。相対的には減益幅が控えめなのが非製造業で、特に強めの計画が打ち出される業種には注目が集まる。

 24年度の売上高計画で、高い増収率を示しているのは、「不動産」「生産用機械」「職業紹介・労働者派遣」「運輸・郵便」「業務用機械」となっている。このうち不動産(6.9%増)は都市部を中心に賃料や不動産価格上昇が増収計画に寄与していることが推察される。生産用機械は6.0%増、業務用機械は4.2%増となっている。特に生産用機械は、世界的に生成AI(人工知能)向けの半導体需要の増加が一因である可能性がある。

 一方、職業紹介・労働者派遣(5.3%増)については、労働市場の流動性の高まりに加え、今年からさらに労働時間規制が強化されていることから、人手不足対応に伴う労働需要の増加が期待されていることがうかがえる。そして、運輸・郵便はインバウンド(訪日外国人観光客)消費の一段の拡大が進み、移動や接触を伴う経済活動がさらに活発化することが反映されているとみられる。

化石燃料コスト低下を享受するのは?

 24年度の経常利益が多くの業種で減益計画となっているのは、もろもろのコスト増が主因と推察される。ただ、こうした中でも増益率が高い業種は職業紹介・労働者派遣に加え、「石油・石炭」「リース」「食料品」「繊維」であり、いずれも2ケタを大きく上回る見通しだ。

 特に職業紹介・労働者派遣は売上高と同様。また、石油・石炭に加えて食料品と繊維も伸びが大きいのは、いずれも化石燃料などの原材料コストが下がっていることが主因と考えられる。また、食料品は、政府の小麦売り渡し価格の引き下げも寄与していると推察される。さらに、増収増益計画のリースは、直近の特定サービス産業動態統計調査でも昨年のリース契約高が大幅に伸びていることが強気な収益計画の背景にあるもようだ。

 なお、4月公表の日銀3月短観の業種別収益計画(大企業)は、法人企業景気予測調査に比べて聞き取りのタイミングが若干遅いことから、同調査の大企業の収益計画も24年度の業績見通しを読み解く手掛かりとして注目したい。

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【プロフィル】永濱利廣…第一生命経済研究所・首席エコノミスト/鋭い経済分析を分かりやすく解説することで知られる。主な著書に「経済指標はこう読む」(平凡社新書)、「日本経済の本当の見方・考え方」(PHP研究所)、「中学生でもわかる経済学」(KKベストセラーズ)、「図解90分でわかる!日本で一番やさしい『財政危機』超入門」(東洋経済新報社)など。

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