<新興国eye>タイ中銀、賛成多数で金利据え置き―2委員再度利下げ主張
2024/4/11 8:50
タイ中央銀行は10日の金融政策委員会で、政策金利である翌日物レポ金利を2.50%に据え置くことを5対2の賛成多数で決めた。今回も全員一致ではなく、2委員が0.25ポイントの利下げを主張、反対票を投じた。
中銀は通貨バーツ安とインフレ上ブレリスクが強まったとして、22年8月会合で18年12月以来、3年8カ月ぶりに利上げ(0.25ポイント)に転換。23年9月会合まで8会合連続で利上げを実施、利上げ幅は計2ポイントに達し、2.50%の金利は13年以来11年ぶりの高水準となっている。23年11月会合で17カ月ぶりに据え置きに転換、今回の会合で3会合連続の据え置きとなった。
市場では金利据え置きは大方の予想通りだったが、一部では今回の会合で20年5月以来、3年11カ月ぶりとなる0.25ポイントの利下げを予想していた。
スレッタ・タビシン首相は景気刺激のための利下げ開始を急ぐよう中銀に圧力をかけ続けている。しかし、中銀は今回の会合でも政治圧力に屈せず、据え置きを決めた。タイ経済は政府の5%成長目標に対し、過去お10年間の平均成長率は2%増と、低迷しているが、中銀は政府の財政刺激策(140億ドルの現金給付の決定)が財政赤字を拡大、金融市場の混乱、ひいては景気リスクを高めることを懸念している。
この点について、中銀は声明文で、「大半の政策委員は現在の金利はマクロ金融の安定を守るのに役立っている。また、構造的な問題の解決に対する金融政策の有効性は限定的と考えている」としている。これは中銀が経済成長の見通しを妨げる主な要因は外的要因と構造的要因と判断しているため、利下げにより、景気リスクが解決されないと判断しているのに対し、政府は景気循環的な景気減速と見て利下げを要求、両者の確執が続いている。このため、市場では利下げ合意はまだ先と見ている。
ただ、市場では2委員が今回の会合でも利下げを支持したことから中銀のタカ派スタンスが緩和、利下げ方向に動き出す可能性があるとも見ている。すでに利下げに向けた準備に入ったとの見方もある。2委員の利下げ支持について、中銀は声明文で、「構造的な問題によるタイ経済の潜在成長率の低下を反映、借り手の債務返済負担を部分的に軽減するため、0.25ポイントの利下げを支持した」としている。
中銀は今後の金融政策について、「経済的要因(景気見通し)に対する不確実性を注視する」とした上で、「輸出回復や政府の財政支出、財政刺激策などにより、タイ経済の見通しに対する不確実性は依然として高い。こうした動向を注視し、今後の金融政策を審議する際には成長とインフレの見通しを考慮する」とした。今回の会合では「タイ経済の見通しに対する不確実性は依然として高い」とし、景気への配慮を強調している。
最新の経済予測によると、24年の成長率見通しを2.6%増(前回会合時は2.5-3%増)、25年は3.0%増を予想。また、24年の外国人観光客の訪問者数を3550万人と予想している。
インフレ見通しについては24年を0.6%上昇と予想したが、25年は1.3%上昇に加速すると懸念を示している。中銀は「24年の残りの期間、公的支出(政府補助金)による景気刺激策により、24年の成長率は前年の伸び(1.9%増)を上回る」とし、需要拡大でインフレが再上昇すると警戒している。また、中銀はここ数カ月のマイナスのインフレ率(3月は前年比0.5%低下)は政府のエネルギー関連の補助金によると指摘、デフレは一過性と見ている。その上で、「インフレ率は24年末までに物価目標は1-3%上昇(中央値2%上昇)に向かって徐々に上昇する」と予想している。
市場では次回6月会合での利下げ開始を予想しているが、中銀は今後も利下げ開始には慎重となり、タイバーツの相場の安定を考慮し、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ開始よりも先に利下げすることに躊躇すると見ている。
次回会合は6月12日に開催される予定。
<関連銘柄>
タイSET<1559.T>、アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、
提供:ウエルスアドバイザー社
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