ECB、政策金利を4.50%に据え置き―6月利下げの可能性

経済

2024/4/12 10:47

<チェック・ポイント>

●ECB、インフレの持続的低下の確信高まれば利下げは適切

●ECB総裁、少数の委員は今回の会合での利下げに自信持っていた

●ECB総裁、「ECBはFRBに依存していない」と、FRBの利下げ待たず

 欧州中央銀行(ECB)は11日の定例理事会で、主要政策金利のうち、市場介入金利である定例買いオペの最低応札金利(リファイナンス金利)を4.50%に据え置くことを決めた。市場の予想通りだった。4.50%の金利水準は依然、2000年10月(4.75%)以来、23年ぶりの高水準となっている。

 また、ECBは他の2つの政策金利についても下限の中銀預金金利を4.00%、上限の限界貸出金利も4.75%に据え置くことを決めた。

 金利据え置きは市場の予想通りだったが、ECB理事会の過半数が6月利下げ開始を支持しているものの、一部の委員は後手に回らないよう今回の会合での利下げ開始を否定しない考えも示していたため、市場ではごく一部で利下げを予想していた。

 ECBは会合後に発表した声明文で、前回3月会合に続き、5会合連続で金利据え置きを決めたことについて、「インフレ率は低下し続けている」とした上で、「主要金利は進行中のディスインフレのプロセス(インフレの低下基調)に大きく寄与する水準にある」とし、現在、高水準となっている金利を据え置くことが適切と判断したとしている。

 ただ、今回の会合では現在の金利水準をいつまで続けるかについて、前回3月会合時に使われた「主要金利が十分に長期間、維持されれば」との文言が削除されており、金融政策スタンスが金利据え置きから利下げサイクル開始にシフトする可能性を示唆した。

 ユーロ圏の最新のインフレ率は3月が前年比2.4%上昇と、2月の同2.6%上昇から急減速、コア指数も3.1%上昇から2.9%上昇と、22年初め以来の低い伸びとなり、インフレ率は物価目標の2%上昇に近づいている。ECBの最新の経済予測ではインフレ率は25年に2%上昇に収束すると予想しているが、市場の一部では今夏にも2%上昇、またはそれ以下に鈍化すると見ている。

 今後の金融政策の方向性を示すフォワードガイダンス(金融政策の指針)について、ECBは今回の会合で初めて、声明文で、「インフレ率が持続的に物価目標に収束しつつあるという確信がさらに高まれば、現在の制限的な金利水準を引き下げることが適切となる」との文言を使った。市場では6月の利下げサイクル開始に向けた環境づくりと見ており、6月と7月の2会合連続、または6月と9月、12月の年内3回の利下げを想定している。

 また、ECBは今回の会合で、「コアインフレを示すほとんどの指標は緩和、賃金の伸びは徐々に鈍化しており、企業は人件費上昇の一部を利益で吸収している」とし、前回会合時よりもインフレ懸念を後退させた。前回会合時では「物価圧力は賃金の力強い伸びもあり、依然として高い」と、インフレリスクに対する警戒感を示していた。

 市場ではECBの6月利下げ開始を約80%の確率で織り込んでいるが、そのためには24年半ばまでに賃金の伸び(現在、前年比4%上昇ペース)が鈍化するという確信が持てるかどうかにかかっていると見ているだけに、今回の会合で賃金の伸び鈍化が確認されたことは利下げの追い風になると見ている。

 ECBのラガルド総裁は会合後の会見で、6月利下げサイクル開始の可能性について、前回会合時と同様、「6月になればECBはさらに多くのデータを入手し、また、新しいインフレ予測も入手できると考えている」とした上で、「ECBはそれを分析、インフレ率が持続的に物価目標に戻るという期待が裏付けられるかどうか判断する。インフレ圧力が期待通りに緩和している兆候が見られれば、6月に利下げする可能性がある」と述べ、6月利下げ開始の可能性を改めて強調した。

 また、今回の据え置き決定が全員一致だったかについて、総裁は、「少数の委員は4月に入手したデータから今回の会合で利下げを決めるのに十分な自信を持っていた」と述べ、最終的には全員一致で据え置きを決めたものの、利下げ支持のハト派寄りのバイアス(金融政策に対する姿勢)の存在を初めて明かした。

 市場ではECBの6月利下げ確率は約80%としているが、FRB(米連邦準備制度理事会)は約20%のため、ECBの利下げが先行した場合、為替市場や国債市場への悪影響が懸念されるとの見方も少なくなく、ECBの6月利下げ確率をやや割り引く要因となっている。

 この点について、総裁は、「ECBはFRBに依存しているのではなく、データに依存している」と述べ、FRBの利下げを待たず、先行して利下げを開始する可能性を指摘した。

 次回の会合は6月6日に開かれる予定。

提供:ウエルスアドバイザー社

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