<新興国eye>ロシア中銀、1ポイント利上げ―次回会合で利上げの必要性検討

新興国

2023/9/19 9:17

 ロシア中央銀行は先週末(15日)の金融政策理事会で、通貨ルーブル安によるインフレ加速リスクを抑制するため、主要政策金利である資金供給のための1週間物入札レポ金利と資金吸収のための1週間物入札預金金利を1.00ポイント引き上げ、13.00%にすることを決めた。

 中銀はロシア・ウクライナ戦争の勃発(22年2月24日)と、それに伴う西側の対ロ経済制裁により、インフレ圧力が一段と高まったことや、ルーブルが一時30%も急落したことを受け、22年2月28日の臨時会合で、主要政策金利を9.50%から一気に20.00%に引き上げている。同4月の臨時会合では景気支援のため、利下げサイクルに転換。利下げ幅が計12.50ポイントに達し、ウクライナ戦争開始後の緊急利下げ分(10.50ポイント)を上回ったことを受け、同10月会合で据え置きに転換、前回6月会合まで6会合連続で据え置いた。しかし、インフレ加速を受け、7月会合にウクライナ戦争開始以来、1年5カ月ぶりに利上げ(1ポイント)に転換。前回8月の臨時会合に続き、これで利上げは3会合連続となり、利上げ幅も5.50ポイントに達した。

 中銀は会合後に発表した声明文で、追加利上げを決めたことについて、「インフレ圧力は依然として高い。内需の伸びが生産拡大能力を上回っており、夏のルーブル安などのインフレリスクが顕在化している」とした上で、「インフレ率の物価目標(4%上昇)からの上方乖離を抑制し、24年に4%上昇に戻すためには追加の金融引き締めが必要となる」としている。

 さらに、中銀は今後の金融政策について、「インフレ率が物価目標に戻り、4%上昇近くでさらに安定するということは金融引き締めの状況が長期にわたって維持されることを意味する」とし、利下げ転換はかなり先になる見通しを示した。エリビラ・ナビウリナ総裁も「インフレリスクが顕在化したため、主要金利を引き上げたが、持続的にインフレ低下が確信できるまでかなりの長期間、高水準に維持する計画だ」と述べている。

 ただ、中銀は次回の会合で金融引き締めの必要性を検討するとしており、前回会合時の「金融引き締めが必要となる可能性がある」からトーンダウンした。中銀は、「国内外の状況や財政、金融市場の反応によってもたらされるインフレリスク、また、物価目標や経済の構造転換の進捗状況との関連で実際と予想されるインフレの動向を考慮し、主要金利についてさらなる決定を下す」とも述べ、(予断を持たず)オープンな姿勢を強調している。

 足元のインフレリスクについて、中銀は、「9月11日時点で、インフレ率は前年比5.5%上昇(7月は4.3%上昇、8月は5.2%上昇)に加速した」とした上で、「過去3カ月間の平均上昇率は、季節調整済みで平均9.9%上昇、コア指数も8.4%上昇となっている」とし、最近のインフレ加速に対し、強い警戒感を示している。

 また、インフレリスクについて、中銀は前回会合時と同様に、「生産拡大能力(供給)を上回る国内需要の強い伸びがインフレ圧力を高め、輸入需要の拡大を通じ、通貨ルーブル安を引き起こしている。(その結果)ルーブル安の物価への転嫁が勢いを増し、インフレ期待が上昇している」と指摘している。

 今回の会合で公表された最新の中期経済予測(23-26年)によると、23年末時点のインフレ率は6-7%上昇(前回予測は5-6.5%上昇)と予想。24年末は4%上昇(物価目標)に戻り、25年以降も4%上昇で推移するとしている。ただ、24年平均では5-5.6%上昇と、物価目標を超える見通し。

 ルーブル安については、中銀は前回会合時と同様、「(西側の対ロ制裁による)対外貿易と金融規制の強化がロシアの輸出需要をさらに弱め、為替レートの変動(ルーブル安)を通じ、インフレを引き起こす可能性がある」と、警戒している。ルーブルは年初来で対ドルで23%下落している。

 中銀は今回の会合でもインフレリスクについて、「内需の拡大が生産の増加ペースを大幅に上回る一方で、利用できる労働力不足により、労働生産性の伸びは実質賃金の伸びを下回る可能性がある」とし、需要の増大に供給が追いつかず、需要過多となる見通しを指摘している。ロシアは現在、ウクライナ戦争の拡大に伴う30万人の兵士動員や国外脱出の増加により、労働者不足に陥っている。

 次回の定例会合は10月27日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 RTS連動<1324.T>、WTI原油<1671.T>、ガス<1689.T>、

 原油<1690.T>、野村原油<1699.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

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