<新興国eye>カンボジア中央銀行、為替市場に介入―ドル高に対応

新興国

2023/9/22 8:52

 9月4日、カンボジアの中央銀行であるカンボジア国立銀行(NBC)は、9月に5000万ドル規模の為替介入(ドル売り・リエル買い)を行うと金融機関に通知しました。通知によりますと、9月6日に1000万ドル、8日に1500万ドル、13日に1000万ドル、15日に1500万ドルの入札(ドル売り)を行うとしています。最近のドル高に対応して、自国通貨リエルの為替レート安定を目指しているものと見られます。NBCが為替市場に介入するのは、2021年以来2年ぶりとなります。

 リエルの対ドルレートは、年初の約4110リエル/ドルから2月末には約4040リエルまで上昇しましたが、その後は減価して足元では4160リエル程度となっています。9月11日には、今回の介入の効果が出たためか、4134リエルまで戻しています。

 リエルの減価は3%ほどであり、日本円や他通貨に比べれば大きくありません。しかし、リエルは信用力が強くないため、ドルと安定的なレートを維持することが、リエルの信用を維持するためには重要となっています。このため、これまで中央銀行では、リエルの対ドルレートを4000リエルから4200リエルの間で安定させるため、緩やかなドルペッグを行ってきています。

 ただ、リエルをドルにペッグさせている中で、今回の局面のように大幅なドル高となると、リエルも実力以上の評価となって、他通貨に対してリエル高となってしまい、輸出競争力に大きな影響を与える可能性があります。信用力の弱い自国通貨を守るためにはやむを得ない面もありますが、中央銀行としては難しい局面を迎えているものと見られます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:ウエルスアドバイザー社

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