【為替本日の注目点】ドル円年初来高値を更新

為替

サーチナ

2023/10/26 10:19

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

 ドル円はNYの午後150円台に入り、前回付けた150円16銭を上回る150円32銭まで上昇。介入がなかったことでストップロスを巻き込み上昇。ユーロドルも下落し、1.0566まで売られる。株式市場は3指数が揃って反落。ナスダックが大きく下げ、決算を発表したアルファベットの下落が下げをけん引。債券は大幅に売られ、長期金利は4.96%台まで上昇。金と原油は反発。

マーケット情報

9月新築住宅販売件数 → 75.9万件

ドル/円 149.86 ~ 150.32

ユーロ/ドル 1.0566 ~ 1.0595

ユーロ/円 158.42 ~ 158.84

NYダウ -104.45 → 33,035.93ドル

GOLD +8.80 → 1,994.90ドル

WTI +1.65 → 85.39ドル

米10年国債 +0.132 → 4.955%

本日の注目イベント

豪 豪7-9月四半期輸入物価指数

トルコ トルコ中銀政策金利発表

欧 ECB政策金利発表

欧 ラガルド・ECB総裁記者会見

米 新規失業保険申請件数

米 7-9月GDP(速報値)

米 9月耐久財受注

米 9月中古住宅販売成約件数

米 中国の王外相、ワシントン訪問(28日まで)

米 企業決算 → インテル、アマゾン、マスターカード、フォード、UPS

「今回は本物か?」

 ドル円が150円台に乗せ、今月3日に記録した150円16銭を上回る150円32銭まで上昇し、年初来高値を更新しました。150円近辺では介入警戒感があったものの、上記水準でも「何もなかった」ことから、ストップロスのドル買いを巻き込み150円32銭まで上昇したようです。投資家は介入の動きが無かったことで、次の介入警戒水準を模索し始めると見られます。ここからは全ての水準で介入警戒感が必要ですが、恐る恐るドルを買う展開はこれまでと変わらず、大きな流れで言えば、ここから昨年10月に記録した151円95銭までの間に介入があるのかどうかという点が焦点になります。仮にないとすれば、上記水準を試す可能性も浮上しそうです。

 米長期金利が再び上昇に転じ、昨日のNYでは4.86%台まで上昇しました。9月の新築住宅販売件数が大きく伸びており、株と債券が売られ金利上昇につながりました。日本の長期金利も上昇しており、昨日の債券市場では0.865%まで上昇しましたが、依然として日米金利差は大きく、ドル買いをサポートする状況になっています。来週の日銀決定会合で仮に日銀が政策据え置きを決めたとすれば、ドル円の上昇に弾みが付く可能性もありそうです。

 日本の9月の消費者物価指数(総合)は「3.0%」と、2カ月連続で鈍化していたものの、日銀の物価目標である「2%」は、昨年4月以来18カ月連続で上回った状態が続いています。それでも大規模な金融緩和政策を続けている日銀ですが、植田総裁は今年8月25日に行われた米ジャクソンホールでのパネル・ディスカッションで、「基調的なインフレは依然として目標の2%を若干下回っていると、われわれは考えている。日銀が現行の金融緩和の枠組みを維持しているのは、それが理由だ」とはっきりと述べ、金融緩和政策維持の正当化に努めていました。ところが、その根拠にも変化が見られ、日銀はいよいよ追い込まれそうな状況になってきました。24日、日銀が基調的なインフレを把握する際の「3つの指標」全てが2%を超えていることが発表されました。日銀が金融政策の判断材料としている指標は「刈り込み平均値」、「加重中央値」そして、「最頻値」の3つです。日銀が発表した3つの指標の値は順に、「3.4%」、「2.0%」、「2.8%」でした。また日銀は足元のインフレは「コストプッシュ型のインフレ」だとし「輸入物上昇の上昇を起点とする価格転嫁の影響」だと分析しています。輸入物価の上昇は言うまでもなく、「円安」の影響に他なりません。その円安の根源の一つに大規模な金融緩和政策があるとすれば、筆者も含めて多くの人が「矛盾」を感じてしまうのは自然です。ここから円安がさらに進む可能性もあり、日銀の政策変更に対する圧力が一段と増すことになります。30-31日の決定会合からますます目が離せません。

 欧米からの圧力もあり、イスラエルは未だに地上侵攻は実施してはいないものの、ハマスへの攻撃は連日続いており、支援物資の遅れもあり民間人の犠牲者は増え続けています。イスラエルのネタニヤフ首相は地上侵攻の可能性を示唆しており、米国も人道的な配慮を求める一方、「地上侵攻を実施するかどうかはイスラエルが決めること」との姿勢を見せています。国連は即時停戦(Ceasefire)を求めていますが、ブリンケン国務長官は一時停戦(Pause)という言葉を使用しています。こうした動きはイランを中心としたイスラム諸国を巻き込んできました。ヨルダン、トルコ、あるいはマレーシアなども批判の声を挙げています。国連のグテレス事務総長は、「ハマスによる攻撃が理由もなく起きたわけではないことを確認することも重要だ」と述べ、「パレスチナ人は56年間にわたり息が詰まるような占領下に置かれてきた」と、イスラエルの大規模な反撃を非難するような発言を行っています。これに対してイスラエルのエルダン国連大使はグテレス事務総長の辞任を要求しています。またトルコのエルドアン大統領も、「ハマスはテロ組織ではなく、領土と市民を守るために戦う聖戦士の集団だ」とのコメントを発表しています。イスラエル・ハマスの戦闘は、ロシア・ウクライナ問題を大きく上回るリスクがあるようにも思えます。地政学的リスクがさらに高まり、ドルや金、原油が買われ、リスク資産の株や低金利の円が売られる展開になっています。これら一連の流れは世界的なインフレ沈静化にとっては逆風となり、高金利政策がさらに長く継続される可能性が懸念されます。

 本日のドル円は149円50銭~150円80銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)

・今日のアナリストレポート

https://info.kabushiki.jp/rd/gaitameonline_academy01.htm

・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧

https://info.kabushiki.jp/rd/gaitameonline_calender.htm

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