<新興国eye>IMF、IV条協議結果―カンボジア経済は高成長へ回復

新興国

2023/11/17 8:45

 国際通貨基金(IMF)は、IMF協定第IV条に基づき、毎年加盟国政府と政策協議を行うこととなっています。10月18日から31日まで実施されたIMF調査団とカンボジア政府との協議結果について、10月31日にIMFから発表がありました。なお、詳細なレポートは、通常2ヶ月ほどで発表されます。

 カンボジア経済は、2021年後半から回復の途上にあるとしています。GDP成長率は、2022年5.2%、2023年5.3%、2024年6.0%と高成長を続けると見ています。その要因としては、観光の回復と電気部品等の輸出の好調を挙げています。他方、縫製品の輸出は引き続き伸び悩んでおり、また、不動産投資の減少も影を落としているとしています。

 物価上昇率については、2023年は2.3%と落ち着くものと見ています。国際収支については、経常収支の赤字は減少傾向にあり、外貨準備も安定的な水準にあるとしています。対外債務についても「低リスク」と見ています。

 金融については、民間向け信用の伸びは2023年8月に8.1%まで下がってきている一方で、不良債権比率が4.6%まで上昇してきていることに懸念を示しました。

 リスクとしては、先進国や中国の経済鈍化による需要減少、米国の金融引き締め、地政学的な問題、国内の民間債務の動向等を挙げています。政策提言としては公共投資管理の強化を求めました。また、マネロン対策の着実な実施も進言しています。構造改革としては、輸出先の多様化、新たな経済エンジンへの投資が必要と提言し、最近の電気部品等の輸出増加を評価しています。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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