<新興国eye>トルコ中銀、5ポイント引き上げ―今後は利上げペース減速へ

新興国

2023/11/27 9:11

 トルコ中央銀行は先週(23日)の金融政策決定会合で、インフレを抑制するため、主要政策金利である1週間物レポ金利を5ポイント引き上げ、40%とすることを決めた。市場の大方は2.5ポイントの小幅利上げを予想していたため、サプライズとなった。

 中銀は23年2月6日の大震災を受け、震災復興を支援するため、2月会合で22年11月以来3会合ぶりに利下げに踏み切ったが、3月会合で現状維持に転換。5月会合まで3会合連続で据え置いたが、新総裁に就任したハフィゼ・ガイ・エルカン氏の下で初めて開かれた6月会合で21年3月以来2年3カ月ぶりに利上げに転換している。これで利上げは前回10月会合(5ポイント利上げ)に続き、6会合連続。40%の金利水準は18-19年の24%を大幅に上回り、過去最高を更新した。

 中銀は会合後に発表した声明文で、追加利上げについて、前回会合時と同様、「インフレ率はやや低下したが、サービス物価の強さや地政学的リスクにより、インフレ圧力は変わっていない」とし、追加利上げを決めたとしている。

 その上で、今後の金融政策については、中銀は、「現在の金融引き締めレベルはインフレ解消の道筋を確立するために必要なレベルにかなり近づいている」とし、前回会合時に使われた「金融引き締めは、インフレ見通しの大幅な改善が達成されるまで、適時かつ段階的に必要なだけさらに強化される」との文言を削除、ハト派に転換。その上で、「金融引き締めのペースは鈍化し、引き締めサイクルは短期間で完了する」としている。

 ただ、中銀は、「インフレ指標(全体指数)とコアインフレの動向を注視、物価安定という主目的に沿って、あらゆる金融政策ツールを断固として使用し続ける」との文言を残しており、「金融引き締めは持続的に物価を安定させため、必要な限り維持される」とし、今後は段階的で小幅な利上げに転換する方針を示している。

 また、中銀は今回の会合でも7月会合で決めた、利上げによる金融引き締め効果を支援するための量的金融引き締め措置を継続することも明らかにした。これはリラ安から企業や消費者の貯蓄を守るため、21年末に導入された、リラ建ての「為替保護預金(KKM)」制度(預金を外貨換算した際、目減りした損失を補填)を廃止、通常のリラ預金口座への資金移動を進める措置で、市場では0.4ポイントの利上げ効果があると見ている。今回の会合でも「トルコリラ預金の割合を増やすための追加措置を講じることにより、通貨伝達メカニズムはさらに強化される」と述べている。

 市場では政策金利の40%への引き上げは、同国の24年末のインフレ率が36%上昇と予測されているため、実質金利がプラスに転換する可能性が高まったと見ている。また、今後も利上げを継続することは中銀に対する信頼性をより高め、通貨トルコリラ安のペースが緩やかになると見ている。

 しかし、現時点でトルコリラは年初来でドルに対し、まだ約35%安と、世界最安通貨となっている。さらに、来年3月に地方選挙を控え、エルドアン大統領が企業や家計の借り入れコストの低下を望んでいるため、利上げペースが鈍化するリスクが高まることを懸念している。

 次回の金融政策決定会合は12月21日に開かれる予定。

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提供:ウエルスアドバイザー社

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