テンポイノベーション・原康雄社長に聞く:人材強化で成長継続へ

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2023/11/28 9:00

 テンポイノベーション(3484)は不動産オーナーから賃借した物件を店舗出店者に転貸する、店舗転貸借事業を手掛ける。東京を中心とした首都圏で飲食店向け居抜き物件に特化し、居抜き物件紹介サイト「居抜き店舗.com」を活用して出店希望者を募っている。サブスクリプション(継続課金)型サービスであることから、コロナ禍など外部環境の変化があっても影響は限定的だった。同社が取り扱う物件数は増加を続けており、今3月期は12期連続の増収増益を見込む。同社の現状と今後について原康雄社長=写真=に聞いた。

 ――5月発表の中期経営計画では、2029年3月期の転貸借物件数5500件(前期実績2216件)、売上高300億円規模(同130億7000万円)、営業利益30億円規模(同12億1200万円)を目標としています。

 「東京を中心とした首都圏における店舗物件の情報は非常に多く、飲食店の開業を目指す方も減少していません。こうした中で、「居抜き店舗.com」を通じたスムーズなリーシングを行うには、良質かつ魅力的な店舗物件を数多く仕入れることが重要になります。そのために営業を中心とした人材の拡充、育成が必要で、当面の目標として25年3月期に営業人員100人体制を目指しています。年間25~30人の採用を行うだけでなく、シニアクラスの営業を新人教育責任者に抜擢するとともに、リーシングノウハウのeラーニングも活用し、効率的な人員育成に取り組んでいます。その効果として約半年で戦力化する新人も多く、また今年入社した新人営業の離職が現時点でゼロと定着の面でも効果が出ています」

 ――一方、今期の上期決算は連結売上高70億9800万円(前年同期比16.3%増)、営業利益5億2500万円(同5.3%減)で、売上高は過去最高を更新したものの減益でした。

 「上期の成約数(転貸借契約を締結した数)は234件と前年同期の224件を上回り、転貸借物件数は2335件(前年同期は2080件)と右肩上がりで増加しています。不動産売買事業の好調もあり、売上高は2ケタ増収を達成しました。その半面、積極的な転貸物件仕入れに伴うコスト(空家賃、造作、手数料)が増加したほか、採用が極めて好調で採用費、給与が想定以上となりました。加えて、業務の効率化を目的とした営業管理システムや電子契約の導入費用も増加しました。短期的には費用増による利益減であり、マイナスのイメージがあると思いますが、当社としては、いずれも将来の収益増に直結する先行投資として考えています」

 ――事業は順調であるが、将来に向けた先行投資によって減益ということですね。今期の業績予想と株主還元については、どのようにお考えでしょうか。

 「通期業績予想は据え置きで、売上高148億4400万円(前年同期比13.6%増)、営業利益12億7600万円(同5.3%増)と、増収増益を見込んでいます。また、株主還元についても強化しており、今期から配当性向を40%水準に引き上げ、26年3月期までの3年間は連続増配を行う計画です。株主優待は、500株以上の保有かつ1年間の継続保有でジェフグルメカード1万円分となります」

コロナ禍を乗り越え「10年先を見る経営」を進める

 ――アフターコロナの事業環境についてはどう見ていますか。

 「新型コロナウイルスの5類移行で、5月以降はインバウンド(訪日外国人観光客)を含む人流が回復し、経済活動の正常化が加速しています。飲食店の来店客も戻っていますが、遅い時間はまだまだで、以前通りになるにはもう少し時間が必要でしょう。ただ、こうした状況を反映し、出店需要は増えてきました。その半面、原材料や光熱費の高騰、人手不足、いわゆる『ゼロゼロ融資』の返済などから、既存店の撤退も一定数増加すると考えています。当社にとっては仕入れとリーシングの両面で事業展開しやすい環境となることもあり、量的・質的な営業強化を進めています。人材育成では、社員が同じ方向を向いてビジネスを進められるようにするだけでなく、一人ひとりのモチベーションにも目を向けています。コロナ禍においては、その状況がいつまで続くかわからず、目先のことに集中せざるを得ませんでしたが、今期から改めて10年先を視野に入れた経営に取り組んでいるところです」

 ――CSR(企業の社会的責任)活動にも積極的ですね。

 「19年に飲食店を活用したこども食堂『お店のこども食堂(みせしょく)』を始めました。既存のこども食堂は場所、資金、人材などの問題で、継続が難しいという面があります。しかし、当社には飲食店とのネットワークがあり、場所が飲食店ということで衛生面の不安が小さく、またプロの料理人が作るおいしい料理が食べられるというメリットがあり、その強みを最大限に生かして開催しています。実際に開催するのはあくまで希望する飲食店ですが、当社は運営費用の支援などを行っています。こうしたこども食堂の広がりと継続性を担保できる取り組みから、『みせしょく』は22年度グッドデザイン賞(公益財団法人日本デザイン振興会主催)を受賞しました。子どもの笑顔が一番の宝ということもありますので、一人でも二人でも喜んでもらえる方がいれば、今後も開催していきたいと思います」

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