<新興国eye>カンボジア信用機構報告、不良債権比率が警戒水域に

新興国

2024/2/16 8:54

 2月1日、カンボジア信用機構(CBC)は、消費者信用指標四半期報告(2023年第4四半期)を発表しました。CBCは、多重債務者を防止する目的で、金融機関から集めた信用情報を集積し、各金融機関の貸付審査にその情報を提供しています。四半期報告では、消費者信用申請状況、消費者信用供与状況、消費者信用の不良債権情報等を取りまとめています。

 今回の報告では、消費者信用申請については、対前期比で、件数は5%増、金額は10%減となりました。その内訳は、個人向け貸付が件数7%増、金額11%減、住宅ローンは件数7%減、金額1%減、クレジットカード利用は件数14%減、金額6%減となっています。

 消費者信用供与状況では、消費者信用借入人数が、対前期比4.5%増の約176万人となっています。残高は、前期末比0.5%増の150.1億ドル(約2兆2210億円)となりました。

 不良債権比率は、2020年第1四半期1.61%、第2四半期2.64%、第3四半期2.42%、第4四半期1.91%、2021年第1四半期2.24%、第2四半期2.57%、第3四半期2.56%、第4四半期2.03%、2022年第1四半期2.35%、第2四半期2.47%、第3四半期2.60%、第4四半期2.51%、2023年第1四半期3.28%、第2四半期3.96%、第3四半期4.71%、第4四半期5.14%と推移しています。借入人の29.9%が複数の機関から借り入れを行っています。新型コロナの影響で返済に困っている借入人については、各金融機関が返済期限の延長等に応じてきましたが、この支援措置が2022年6月末で終了したこともあり、不良債権比率が上昇しており、ついに5%を超えて警戒水域に入ってきました。

 新規貸付需要は新型コロナの国内感染の拡大を受けて2021年~2022年は概ね横ばい状態でした。2023年は、第1四半期の大幅増、第2四半期の減少の後、第3四半期・第4四半期は盛り返しています。しかし、不動産向けの落ち込みが続いており、不動産向けの貸付需要の減退が現実化してきたものと見られます。

 なお、こうした基礎情報が、定期的に公開されることは、金融セクターの健全性維持の観点からも重要性が高いものと見られます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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