<新興国eye>インドネシア中銀、予想通り金利据え置き―通貨ルピア相場安定狙い

新興国

2023/6/26 9:15

 インドネシア中央銀行(BI)は先週(22日)の理事会で、通貨ルピアの対ドル相場の変動(下落)圧力を緩和するため、主要政策金利の1週間物リバースレポ金利を5.75%に据え置くことを決めた。また、中銀は過剰流動性を吸収するための翌日物預金ファシリティー金利(FASBIレート)も5%、翌日物貸出ファシリティー金利も6.5%と、いずれも据え置いた。

 金利据え置きは市場の予想通りだった。市場では国内景気が堅調を維持、インフレが低下傾向にあるものの、FRB(米連邦準備制度理事会)の追加利上げによるルピア相場の下押し圧力を緩和するため、中銀は現状維持を決めると見ていた。焦点はいつまで据え置きを続けるかで、市場では23年末まで据え置き、利下げ転換は24年になると見ている。金利水準は依然、19年以来4年ぶりの高水準となっている

 中銀はインフレ加速を受け、22年8月会合で3年9カ月ぶりに利上げに転換、23年1月会合まで6会合連続で金利を引き上げたが、利上げ幅が計2.25ポイントに達したことを受け、これまでの利上げ効果を見るため、2月会合で22年7月以来7カ月ぶり金利を据え置いた。これで金利据え置きは5会合連続となる。

 中銀は会合後に発表した声明文で、前回5月会合時と同様、「政策金利を5.75%に維持することは23年のコアインフレ率が物価目標の前年比2-4%上昇のレンジ内に留まり、インフレ率(全体指数)が早期に物価目標に戻すという金融政策スタンスと一致する」とし、引き続き、これまでの利上げが経済やインフレに及ぼす効果を見たい考えを改めて強調した。

 また、中銀は、「金融政策の焦点は、輸入インフレを抑制し、世界的な金融市場の不確実性の影響を軽減するため、ルピア相場の安定を強めることにある」とし、ルピア相場への下押し圧力を緩和するため、金利を据え置いたとしている。

 最近のルピア相場について、中銀は、「世界的な金融市場の不確実性により、6月21日現在で、ルピア相場は5月の平均レートに比べ0.56%下落した」としたが、前回会合時と同様、「力強い経済成長の見通しと、低インフレ、国内金融資産の魅力的な利回りに伴う経常黒字と海外資本の流入に支えられ、ルピアの上昇が続くと予想している」としている。

 しかし、市場では今後も輸出減少と経常黒字の縮小により、ルピアには下押し圧力が高まると懸念している。このため、中銀は当分の間、ルピア相場の下落圧力となる景気刺激の利下げは困難で、また、インフレ率が物価目標に収束するまで、現状維持を続けると見ている。ただ、景気が鈍化する可能性が強いため、ルピア相場が安定すれば、中銀は23年の成長率目標(4.5-5.3%増)を達成するため、9月までに利下げを検討するとの見方や、金利を据え置いたまま、預金準備率の引き下げを検討する可能性もあると見られている。

 景気の見通しについて、中銀は、「インドネシア経済は内需と好調な輸出に支えられ、引き続き堅調な成長が続いている」とした上で、「23年の成長率は4.5-5.3%増のレンジの上限となる可能性がある」とし、前回会合時の見通しを据え置いた。

 インフレ見通しについては、「5月のインフレ率(全体指数)は前年比4%上昇と、物価目標のレンジ(前年比2-4%)内にあり、コア指数も同2.66%上昇(5月は同2.83%上昇)となった」とした上で、「今年のインフレは物価目標のレンジ内で引き続き抑制される」と予想している。

 今後の金融政策について、中銀は前回会合時と同様、「景気回復の勢いを維持するため、ポリシーミックス(複数の経済政策手段の一体運営)を強化する」とした上で、「引き続きルピア安定化政策を強化、輸入インフレを抑制、国際金融市場の不確実性(欧米の銀行危機)がルピア相場に及ぼす影響を緩和する」とし、これまで通り、ルピア安阻止のため、市場介入や流通市場でのSBN(短期国債)の売買を通じたツイストオペ(短期債を売却して長期債を購入、バランスシートを拡大しないで保有債券の期間を長期化させるオペ)を継続、SBNの短期の利回りを高め、海外からのポートフォリオ投資の魅力を高めていくとしている。

 次回会合は7月24-25日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、アセアン50<2043.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

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