<新興国eye>カンボジアの成長率の伸びは続く―世界銀行半期経済報告

新興国

2023/10/20 8:52

 10月1日に、世界銀行は、東アジア・大洋州地域半期経済報告(2023年10月改訂版)を発表しました。今回の報告書は「開発のためのサービス業(Services for Development)」と題されています。

 報告書では、「2023年の東アジア・太平洋地域は、5%の高成長を達成するが、中国経済の不調を主原因として2023年後半から弱含み、2024年の成長率は4.5%に低下する」と分析しています。

 カンボジア経済については、2023年のGDP成長率予測を5.5%(2023年4月予測5.2%)に引き上げました。2024年は6.1%(同5.7%)、2025年は6.3%(同6.1%)にまで高まると予測しています。更に中長期的には7%程度の高度成長への回帰が見込まれると予測しています。2023年は、世界の主要国の需要減退に伴い輸出が伸び悩んでいる一方で、観光セクター等のサービス産業が回復傾向にあり、成長を支えているとしています。2023年の外国人観光客数は、ピークだった2019年の8割程度までの回復が期待できると見ています。

 物価上昇率は、ロシアのウクライナ侵攻を発端とした資源・食料の値上がりの影響を受け、2022年は5.5%まで上昇したものの、ピークは過ぎて、2023年は2.5%に低下すると見ています。また、2024年は2.5%、2025年は2.0%と安定すると予測しています。経常収支の赤字(対GDP比)は縮小に向かいつつあり、2021年の42.6%、2022年の24.4%から、2023年13.4%、2024年11.5%、2025年9.6%と急速に改善すると予測しています。外貨準備は、2022年末の177億ドルから2023年6月末には184億ドル(輸入の7か月分)に増加し、非常に安定的なレベルを維持しています。

 貧困率は、2019/2020年の17.8%から、2021年は新型コロナの影響による悪化が見込まれるものの、貧困・脆弱世帯向けの現金支給や社会保障の拡充等もあり、今後は改善が期待できると見ています。

 リスクとしては、欧米の景気後退、世界的な金融引き締めの長期化、国際資源価格の高騰等をあげています。特に、不振となっている建設・不動産向けの貸付の不良債権化による金融機関の不良債権比率の悪化は重要なリスクとなっていると指摘しています。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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