<新興国eye>ロシア中銀、予想上回る1ポイント利上げ―次回9月会合で追加利上げを示唆
2023/7/24 9:18
ロシア中央銀行は先週末(21日)の金融政策理事会で、インフレ加速リスクを警戒する中、主要政策金利である資金供給のための1週間物入札レポ金利と資金吸収のための1週間物入札預金金利を1.00ポイント引き上げ、8.50%にすることを決めた。利上げは市場の予想通りだったが、上げ幅は予想(0.25-0.75ポイント)を上回り、サプライズとなった。
中銀はロシア・ウクライナ戦争の勃発(22年2月24日)と、それに伴う西側の対ロ経済制裁により、インフレ圧力が一段と高まったことや、ルーブルが一時30%も急落したことを受け、22年2月28日の臨時会合で、主要政策金利を9.50%から一気に20.00%に引き上げた。しかし、同4月の臨時会合から景気を支援するため、利下げサイクルに転換。利下げ幅が計12.50ポイントに達し、ウクライナ戦争開始後の緊急利下げ分(10.50ポイント)を大きく上回ったことを受け、同10月会合で据え置きに転換、前回6月会合まで6会合連続で据え置いた。利上げは22年2月のウクライナ戦争開始以来、1年5カ月ぶり。
中銀は会合後に発表した声明文で、利上げを決めたことについて、「足元の物価上昇はさまざまな指標を考慮すると、年率4%上昇を超え、依然、上昇傾向にある。国内需要の拡大は利用可能な労働資源が限られていることなどにより、生産拡大の能力を超えている」とした上で、「中期的に、インフレリスクはかなり高まっている」とし、一段と警戒を強めている。
インフレリスクについて、中銀は、「公共部門の需要が引き続き高い一方で、消費者の需要がさらに増加すれば、インフレリスクが高まる。内需の拡大は生産の増加ペースを大幅に上回る可能性がある一方で、利用できる労働資源が限られるため、労働生産性の伸びは実質賃金の伸びを下回る可能性がある」とし、需要の増大に供給が追いつかず、需要過多となる見通しを指摘している。また、中銀はサプライサイドの問題として労働力不足と生産性の低下リスクを挙げた。ロシアは現在、ウクライナ戦争の拡大に伴う30万人の兵士動員や国外脱出の増加により、労働者不足に陥っている。
また、中銀はインフレリスク要因として、「高いインフレ期待に加え、今年初めからのルーブル安(年初来で約18%下落)による物価上昇リスクは経済予測の標準シナリオを上回り、一段と強まる可能性がある」とし、ルーブル安の進行を挙げている。さらに、中銀は、ロシア・ウクライナ戦争についても、前回会合時と同様、「(西側の対ロ制裁による)対外貿易と金融規制の強化がロシアの輸出需要をさらに弱め、為替レートの変動(ルーブル安)を通じ、インフレを引き起こす可能性がある」と懸念を示している。
今後の金融政策の見通しについて、中銀は前回会合時と同様、「財政赤字がさらに拡大した場合、インフレリスクが増大、インフレ率を24年に物価目標(4%上昇)に戻し、その後も4%上昇近辺で維持するためには、次回9月会合で金融引き締めが必要となる可能性がある」として、追加利上げに含みを残している。ただ、市場では中銀の利上げサイクルは小規模なものとなり、最終金利が10%を超えることはないと見ている。
今後のインフレ見通し(全体指数)については、中銀は、「23年のインフレ率は5-6.5%上昇となり、24年物価目標の4%上昇に戻る」と予想。23年の従来予想(4.5-6.5%上昇)を引き上げた。直近のインフレ率は6月が前年比3.3%上昇と、5月の同2.5%上昇を上回り、加速傾向にある。
今回の会合で発表された最新の経済予測によると、インフレ見通しは23年末時点で前年比5.0-6.5%上昇、24年末~26年末はいずれも4.0%上昇を予想している。GDP伸び率の見通しは23年が1.5-2.5%増、24年は0.5-2.5%増、25年は1.0-2.0%増、26年は1.5-2.5%増を予想。政策金利の見通しは23年が平均で7.9-8.3%、24年は8.5-9.5%、25年は6.5-8.5%、26年は5.5-6.5%を予想している。
次回の定例会合は9月15日に開かれる予定。
<関連銘柄>
RTS連動<1324.T>、WTI原油<1671.T>、ガス<1689.T>、
提供:ウエルスアドバイザー社
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