【株式新聞・総力配信】佳境迎えた半導体株、加速する相場の先に見える景色

株式

2019/10/21 14:04

 19年の株式市場も終盤を迎える。直近で年初来高値を更新した日経平均株価については、年末へ向けもう一段の盛り上がりを期待する見方もある。一方、指数のはるか先を突っ走るのが半導体セクターだ。夏場以降、全体相場を圧倒してきた関連株。その勢いは「まだ」なのか、それとも「もう」なのか?

<2020年のプラス成長織り込む>

 年初来の上昇率が軒並み数十%となり、中には2倍超に値上がりした銘柄もある半導体株。これまでのところ、慎重派は完敗だ。年央に示されたWSTS(世界半導体市場統計)の19年の半導体市場の見通しは前年比12%減だが、早い段階で株式市場は20年のプラス成長への回帰を織り込んできた。

 製造装置大手の東京エレクトロン<8035.T>やSCREENホールディングス<7735.T>は、年初来高値圏で推移している。17日終値時点で、19年安値に対して日立ハイテクノロジーズ<8036.T>とスクリンがほぼ2倍に値上がりし、東エレクも9割高を遂げた。

 こうした楽観シナリオを肯定する材料も徐々に増えてきた。18年夏ごろをピークに急速に悪化した世界3大メモリーメーカー(韓国のサムスン電子とSKハイニックス、米マイクロン・テクノロジー)の四半期業績は、足元で下げ止まりつつある。半導体ファウンドリー(受託生産)世界最大手の台湾TSMCの売上高は7-9月に前四半期を2割強上回り、10-12月も中央値で9%の伸びを見込む。

 依然として需要の盛り上がりを欠く記憶媒体のメモリーに対し、演算を担うロジックは、5G(次世代高速通信システム)向けなどの引き合いに支えられ堅調だ。ロジック半導体の検査装置に強いアドバンテスト<6857.T>は、相対的に良好な業績をキープしている。

 また、次世代の製造技術の「EUV(極端紫外光リソグラフィー)」に絡んでは、露光装置のASMLホールディングスの7-9月の受注が過去最高となった。日本メーカーも、マスク欠陥検査装置を手掛けるレーザーテック<6920.T>などが恩恵を受けている。

<選別物色のステージへ>

 しかし、このところの関連株の一斉高は当面の好材料を反映したとも考えられる。前のめりになる市場は、正確に実態を先取りしているだろうか。明るい話題が散見される一方、カギを握るメモリーの市況は弱いままだ。WSTSによれば、19年のメモリー需要は前年比で30.6%減少する。

 メモリーに関しては、一時的にスポット価格を上昇させたハプニングの反動にも備える必要がある。6月の停電で生産がストップしたキオクシア(旧東芝メモリ)の四日市工場や、7月に日本が踏み切った韓国への半導体材料の輸出規制をめぐる混乱が正常化すれば、需給はさらに緩む可能性がある。主要なメーカーの多くは、既に20年の設備投資の減額を公表している。

 最近では米中貿易協議の進展期待が高まるなど、マクロ環境をめぐるリスクオンムードも半導体株を支える。このため、相場はすぐには変調を来すことがないかもしれない。ただ、間近に控えた各社の決算発表は、投資家がいったん立ち止まるきっかけとなる。ここからは選別物色の傾向が強まりそうだ。

 主要企業の決算は、24日のディスコ<6146.T>が先陣を切る。20年3月期上期の連結営業利益150億円(収益基準の変更により前年同期との比較はない)との会社予想に対し、一部で155億円に上ブレしたとの観測がある。焦点は好採算の消耗品の動向だ。

 28日には6月期決算のレーザーテクが第1四半期業績を開示する。29日のHOYA<7741.T>とともに、EUV市場の活性化を確認できる内容となるかが注目される。30日に控えるスクリンは、ファウンドリー向けに強く、TSMCの大幅な設備投資計画の引き上げが追い風となる可能性がある。アドバンテスも同じ日に決算を発表する。

 31日は東エレク。同社に関しては、やはりメモリー投資の抑制が懸念材料だ。特に、前工程の製造装置の見通しをマーケットは楽観視し過ぎているともみられ、ここが一つの分岐点となることも想定される。一方、11月上旬にも打ち出される米アップルの新年度(20年9月期)の設備投資計画も重要だ。同社の5Gスマホへの力の入れ具合は、低迷するメモリー需要の回復の可否を決める大きなファクターとなりそうだ。

 このほか、中・小型株では山一電機<6941.T>とヤマハモーターロボティクスホールディングス(=ヤマハMRH)<6274.T>をマークしたい。前者は半導体の検査用ソケット大手で、5Gスマホの本格離陸が収益回復の起爆剤になる。ヤマハMRHは傘下に、パッケージ装置に強く、TSMCを主要顧客に持つアピックヤマダを擁する。

提供:モーニングスター社

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