<新興国eye>JETRO日系企業実態調査2019―カンボジア景況感は好調

新興国

2019/12/13 9:28

 11月21日、JETRO(日本貿易振興機構)は、「2019年度 アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」結果を公表しました。2018年8-9月、北東アジア5カ国・地域、東南アジア9カ国、南西アジア4カ国、オセアニア2カ国の計20カ国・地域に進出する日系企業に対する現地での活動実態に関するアンケート調査の結果となります。

 有効回答は5697社でした。調査結果は、営業利益見通し、今後の事業展開、経営上の問題点、原材料・部品の調達、輸出入の状況、通商環境の変化の影響、生産性・イノベーション、個人・企業データの利活用、現地市場開拓への取り組み、賃金の10点にまとめられています。

 カンボジアについては、景況感を示すDI値が19年29.9ポイント、20年33.3(20カ国中7位)と大変明るいものとなっています。今後1-2年の事業拡大意欲も、50.0%が拡大するとしており(20カ国中8位)、引き続き高い水準を維持しています。

 カンボジアでの経営上の問題点としては、従業員の賃金上昇、原材料・部品の現地調達の難しさ、電力不足・停電、品質管理の難しさ、従業員の質等が挙げられています。なお、「輸入通関手続きは過去2-3年で改善したか」との質問への回答では、「改善した」と「やや改善した」の合計で50.6%となっており、第1位です。

 製造業・作業員の給与年間実負担額(本給、諸手当、社会保障、残業、賞与などの年間合計。退職金は除く)は、2989ドル(前年2917ドル)となっています。中国9962ドル、タイ8128ドル、ベトナム4041ドル、ラオス2505ドル、ミャンマー2261ドル、バングラデシュ1829ドルなどの周辺国と比べてみても未だに低いレベル(19カ国中14位)にあります。

 カンボジアの相対的な低賃金は引き続き優位性を維持するものの、「生産性からみた場合、所在国・地域の政府が設定する最低賃金は妥当な金額と思うか」との質問への回答は54.6%が「いいえ」であり、日系企業の不満・懸念が出ているものと見られます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。1982年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。07年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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