<年末年始特集>2020年の債券・金利動向を読む―大統領選控える米国の動きを注視
<カギ握る米大統領選>
20年・国内外の債券市場で、最大イベントとして注目されるのは11月の米大統領選挙だろう。
SMBC日興証券金融経済調査部の末澤豪謙金融財政アナリストは、「再選に向けて、トランプ政権の対外強硬姿勢が強まる。米中貿易戦争が一段と深刻化すれば、年後半の世界経済の成長回復期待が一段と後ズレすることが予想される。一方で、トランプ氏は株高も指向するとみられ、FRB(米連邦準備制度理事会)には利下げ圧力を強めそうだ。為替政策を発動する可能性もある」という。
<米金利の行方>
米大統領選挙に向けて、米金利はどのように推移するのだろうか。
大和証券金融市場調査部の谷栄一郎チーフストラテジストは、「米10年金利の想定レンジは1.65%-1.95%、米中協議のサプライズには警戒が必要だが、FOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーが算出する『長期的見通し』に上値を抑制されるため、米10年金利が2%を上回るハードルは高い」と指摘する。
一方、マネックス証券執行役員の大槻奈那チーフ・アナリストは、「米金利は、半年前からの政策金利の引き下げ効果が徐々に浸透するだろう。大統領選に向けて再度減税の可能性も残し、米景気は上向く。米国予算で財政赤字は前年比26%増の1兆ドルとなる見込み。財政への不安と景気の拡大という二重の意味で米金利は上昇しやすい」との見方を示す。
また、ニッセイ基礎研究所経済研究部の窪谷浩主任研究員は、「次の米国の政策金利の引き上げの条件としては、継続的で大幅な物価上昇が必要となるが、足元でインフレ上昇が見込まれないなかでは、政策金利の据え置きが長期化する可能性が高い」と分析する。
<20年の日銀と債券市場>
20年の国内債券市場も、海外の市場動向に左右されるが、大規模な金融緩和を続ける日銀の動向から目が離せない。
日銀は12月19日の決定会合で大規模な金融緩和政策の現状維持を決めた。短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する金融政策を据え置いた。黒田総裁は会見で「引き続き緩和方向を意識した運営が適当」との考えを示した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券リサーチ部の六車治美シニア・マーケットエコノミストは、「日銀に対する金融緩和圧力は後退したが、景気の先行きについては予断を許さない。世界経済の減速を受けて日本の鉱工業生産は弱く、消費増税後の個人消費動向も下振れリスクがある」としたうえで、特に、「コアCPI(消費者物価指数)は前年比プラス0.5%と日銀の目標である2%を大きく下回っている。日銀は世界経済の持ち直しを願いつつ、20年も長短政策金利を据え置く可能性が高い。10年金利は日銀の誘導水準であるゼロ%程度から大きく離れることはないだろう」という。
20年も世界的な低金利の常態化が継続する可能性が高い。こうした状況のなかで、債券市場にとっての最大のリスク要因は世界同時株高。リスクオンに大きく傾けば、債券から株式へ資金フローの大転換が起こる。ただ、相場には上り坂、下り坂のほか、まさかがが存在する。(田部正博)
提供:モーニングスター社
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