【株式新聞・総力配信】テスラの時代がやってきた―トヨタの企業価値抜き去る日も

株式

2020/1/27 14:14

 EV(電気自動車)メーカーの米テスラの株価が急騰している。同国の自動車市場で昨年最もシェアを伸ばした同社の時価総額は直近、フォルクス・ワーゲン(VW)を抜き自動車メーカー世界2位に浮上した。一時は深刻な資金繰りの悪化も懸念された業界の風雲児に、ようやく時代が追い付いたのか。世紀のゲームチェンジが、日本企業もいや応なく巻き込んでいく。

 野心的起業家として知られるイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)率いるテスラ。前年7-9月期の純利益は1.4億ドル(約150億円)となり、3四半期ぶりに黒字に浮上した。同年1-3月には四半期ベースで過去最大に迫る赤字(7.0億ドルの最終損失)に落ち込んでいたが、市場予想を覆す収益改善をきっかけに、株価は昨年10月以降で2.4倍となり初めて500ドル台を突破。600ドルにも迫った。

 投資家を業績面で何度も裏切り、時に常軌を逸した言動で困惑させてきたマスク氏だが、マーケットには再び期待が広がっている。その理由の一つが、コンパクトセダン「モデル3」の好調な販売動向だ。テスラの昨年10-12月の出荷数は11.2万台(うちモデル3は9.2万台)に上り、前四半期の9.7万台(同7.9万台)を超える過去最高記録を更新した。

 2017年に鳴り物入りで上市したモデル3は当初、製造工程の問題で予定生産台数を大きく下回る状況が続いた。同社の財務を圧迫する深刻な問題となり、マスク氏がかねてから約束していた3.5万ドルの大衆車投入も延び延びとなった。ようやく昨年2月に低価格モデルを発売したものの、その後の赤字は改めて不安定な収益体質を印象付けた。

<伸びる「モデル3」の販売、中国展開本格化へ>

 ところが、こうした状況も過去のものになろうとしている。テスラの出荷数は昨年10-12月に前年同期比で2割超増加し、通年目標の下限の36万台もクリアした。生産数も大きく伸び、操業度の向上による利益率の改善が想定される。1月29日に発表を予定する同四半期の決算では黒字定着も視野に入る。

 そして、投資家の希望を支えるもう1つの要素が海外展開の本格化だ。特に、EV大国の中国にはテスラの社運が掛かる。上海にある同社の工場「ギガファクトリー3」からの出荷が間もなく本格化するモデル3は、同国のEV購入補助金の対象にもなり、競合に対し大きな価格の優位性を確保した。まだ限定的な現地生産の比率が今後高まれば、採算性も一気に高まるだろう。

 EVへの世界的なシフトの大波に乗るべく、テスラの株価が市場で高く評価されるのはうなずける。VWやゼネラル・モーターズ(GM)、フォードを上回るその時価総額は23日時点で1031億ドル。まだ2倍超の企業価値を持つトヨタ自動車(7203、25.6兆円=約2300億ドル)でさえ、うかうかしていられない。

<パナソニックは勝ち馬に乗る?>

 テスラとともに飛躍する日本株はどれか。同社は部品の内製にこだわり、半導体さえ自社開発しているもよう。このため、いわゆる関連銘柄は多くない。それでも、新たなパラダイムの勝ち馬に賭ける企業は存在する。

 もちろん筆頭は、テスラに電池を供給するパナソニック<6752.T>だ。両社は米ネバダ州で車載用バッテリーを生産する「ギガファクトリー1」を共同で展開。テスラの販売好調は、言うまでもなくパナソニックにとって好材料となる。

 ただ、この提携関係をめぐっては企業文化の違いや軋轢(あつれき)がたびたび伝わるなど、決して順調ではなかった。また、韓国のLG化学が中国生産のテスラ車向けに電池を供給することで、かつてのパナソニックの独占供給体制は崩れ、さらに最近では中国のCATLもそこに食い込んできた。

<住友鉱やアイダ、ツバキナカも>

 それでも昨年11月に開催されたパナソニックの投資家向けイベント「IRデー」で、津賀一宏社長はテスラとのパートナーシップを継続し利益をシェアしていきたい考えを強調している。テスラの黒字定着後に視野に入るバッテリーの価格交渉は、足元のパナソニックの株価を下支える一因だ。また、同社はトヨタとも車載電池で協業する。

 パナソニックに電池材料(正極材のニッケル酸リチウム)を供給する住友金属鉱山<5713.T>も、テスラの販売増は追い風。同社もトヨタにも供給している。また、新日本電工<5563.T>は住友鉱の正極材の加工を受託する。このほか、過去にテスラからプレスラインの受注実績があるアイダエンジニアリング<6118.T>や、EVの軸受け用精密鋼球でツバキ・ナカシマ<6464.T>も浮上する。

提供:モーニングスター社

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