<新興国eye>カンボジアの灌漑面積、農地全体の62%に拡大

新興国

2020/7/17 11:56

 カンボジア水資源気象省のリム・ケン・ホー大臣によりますと、19年末現在、カンボジアの農地の62%が灌漑(かんがい)でカバーされるに至ったとのことです。カンボジアの農地全体295万7400ヘクタールのうち、灌漑面積は183万5422ヘクタールで、さらにこのうちの53万7077ヘクタールは、乾季でもコメ作りが可能とのことです。

 カンボジアのコメ生産は、これまで雨水に頼ってきたところが多かったのですが、水が来ると、1回当たりの反収(10アール当たり収穫高)が伸びることに加え、乾季にも生産可能となれば二期作も可能となるため、反収が2-3倍に増えます。灌漑が、農村の収入増加に直結することとなります。このため、水資源気象省では、日本などの支援を得て灌漑事業を行ってきました。水資源気象省によりますと、23年までにはさらに12件の大規模灌漑事業が完成する見込みであるとしています。

 また、日本のゴムメーカーのシバタ工業(本社:兵庫県明石市)は、日本のため池技術のカンボジアでの普及に向けた取り組みを7月から現地で始めるとのことです。同社のため池技術は、17年にJICA(国際協力機構)の「中小企業海外展開支援事業―案件化調査―」に採択され、これまで調査が進められてきました。今回普及を目指すのは「天蓋(てんがい)付シート式ため池」という貯水技術で、池の底にゴム製シート、池の表面にビニール製の天蓋を設置するものです。

 同社の調査によると、水の蒸発量は天蓋のないため池に比べ、5分の1に減らすことが可能になったとしています。さらに光を遮断することで植物プランクトンの発生を抑制し、水質維持にも効果があるとのことです。計画では、22年9月までに、雨水に依存する農村4カ所に同方式のため池を造成します。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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